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Cancer biology and new seeds

制御性T細胞の同定とその役割

The identification of Treg cells and their roles in immunity

田中淳坂口志文

がん分子標的治療 Vol.13 No.4, 66-70, 2015

「SUMMARY」病原体に対する免疫応答は,生体防御に不可欠なシステムである。免疫系は,病原体を非自己として認識し排除する。一方,自己抗原や無害の非自己抗原に対しては免疫応答を起こさず,免疫自己寛容を維持する。この免疫自己寛容の維持に須要な細胞が制御性T細胞(Treg)である。Tregは免疫応答の抑制に特化した細胞であり,自己抗原に対する免疫応答,あるいはアレルギーなどの過剰な免疫応答を抑制する。Tregの欠損により,IPEX症候群などの致死的な自己免疫疾患,炎症性腸疾患,重度のアレルギーを発症する。また,Tregは多くの腫瘍に浸潤し,免疫応答を抑制する。腫瘍は元来,自己抗原または準自己抗原で形成されるため,腫瘍に対する免疫応答がTregにより抑制されることは必然といえよう。すなわち,腫瘍内のTregの数的減少あるいは抑制能の減弱により,免疫応答の抑制を解除し,抗腫瘍免疫応答を増強できる。近年,腫瘍内Tregを標的とし,いかにコントロールするかに注目が集まっている。
「KEY WORDS」制御性T細胞,腫瘍免疫,免疫自己寛容,自己免疫疾患,免疫抑制

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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