Cancer biology and new seeds
抗体と殺細胞性抗がん剤の複合体
Antibody-drug conjugates
がん分子標的治療 Vol.13 No.4, 53-58, 2015
「SUMMARY」殺細胞性抗がん剤は,強い抗腫瘍効果をもつが有害反応が強く,治療域も狭い。一方でモノクローナル抗体医薬は,特異的な標的分子に結合して抗腫瘍効果を発揮する。近年,この両者の特徴を活かした薬剤である抗体-薬物複合体(ADC)の登場により,強い抗腫瘍効果を維持しつつ副作用を軽減することが可能となった。ADCに欠かせない構成要素には,①腫瘍抗原,②輸送する抗体,③化学的結合(方法,部位,結合数),④リンカー,⑤結合させる抗がん剤があり,これらの工夫により,治療効果と安全性に優れたADCが創製されている。現在,日本で承認が得られているADCには,ゲムツズマブオゾガマイシン,ブレンツキシマブ ベドチン,トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)がある。今後の課題としては,耐性機構の解明とその克服が挙げられ,今まで以上に腫瘍選択性や抗腫瘍効果の高いADCの登場に期待が寄せられる。
「KEY WORDS」モノクローナル抗体,抗がん剤,抗原,リンカー,化学的結合
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。