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Pharmacogenomics and biomarker

非小細胞肺がんにおけるHER3標的治療とヘレグリン発現の意義

HER3 targeting therapy and heregulin expression in NSCLC

米阪仁雄

がん分子標的治療 Vol.13 No.3, 71-75, 2015

「SUMMARY」ヒト上皮成長因子受容体(HER)3受容体は上皮成長因子受容体(EGFR),HER2受容体と同じくHERファミリーに属する。ヘレグリンはHER3受容体に特異的に結合し,活性化をもたらすリガンドで,細胞のがん化,増殖,薬剤耐性などに関与する。HER3受容体を治療標的とするpatritumabなどの抗HER3抗体薬が開発途上にあり,前臨床試験ではその抗腫瘍効果はヘレグリンの発現レベルと相関した。また,ヘレグリンの過剰発現はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の耐性にも関与する。このEGFR-TKI耐性は,抗HER3抗体薬patritumabの併用で克服されることが前臨床試験で確認された。さらに,非小細胞肺がん(NSCLC)症例を対象としたpatritumabとEGFR-TKIエルロチニブの併用療法の第Ⅱ相臨床試験(HERALD試験)のバイオマーカー解析の結果,ヘレグリン高発現症例に対し同試験治療は有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した。抗HER3抗体はNSCLCの治療薬として有望であり,ヘレグリンはその効果を予測するバイオマーカーと考えられる。
「KEY WORDS」EGFR阻害薬,抗HER3抗体,EGFR遺伝子変異,非小細胞肺がん,ヘレグリン,patritumab,エルロチニブ

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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