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CAREER MAKING

専門医から若手ドクターへの提言

細矢光亮

up-to-date 子どもの感染症 Vol.8 No.1, 24-27, 2021

私は医師の家系に育ちました.高祖父が山形県最上郡古口で医術開業,曾祖父と祖父は軍医,父は山形県新庄市で医院開業(外科),兄は後に大学教授(放射線科)を務めました.幼いころから父の白衣姿を見ておりましたので,何となく医師に憧れを持っていました.小学校の頃は「シュバイツァー」や「野口英世」などの伝記を読んで,「人を救う医師になりたい,人を救う研究をしたい」と思っていました.しかし,中学,高校と進むにつれて,「白い巨塔」に描かれているような熾烈な競争社会では生きていけないだろうと,医師への道を諦めかけていました.私が悩んでいる姿を見兼ねたのか,医学部に進んでいた兄より渡されたのが,遠藤周作の「灯のうるむ頃」という小説でした.主人公の町医者が診療所の隣に研究室を作り,がんの研究を続け,がんに効く薬を開発します.その研究結果を発表しようとしますが,学会の厚い壁に阻まれて挫折してしまうという不条理に思える内容です.ところが,私は不思議と「穏やかな気持ち」になりました.
人と競うことは嫌いで,討論は不得手です.華々しい成果を挙げて偉くなりたいというような上昇志向は乏しく,将来は開業して何らかの研究が続けられればいいと思いながら福島県立医科大学に進学し,卒業しました.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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