Special Article:特集
アルコール依存症における精神科・内科の連携
1.総論 ―過去から現在―
Frontiers in Alcoholism Vol.12 No.1, 14-18, 2024
本邦のアルコール消費量は1999年以降は徐々に減少傾向を認めているが,大酒家や問題飲酒者は増加傾向にある。慢性的な多量飲酒による臓器障害で,最も重篤かつ高頻度なものがアルコール性肝障害(alcoholic liver disease:ALD)である。欧米ではALDの言葉の持つ響きがalcoholicsを想起させ,偏見になるため,記載をアルコール関連肝疾患(alcohol-related/associated liver disease:ARLD)と改められている。2018~2021年の肝硬変の成因別分類において,アルコールが2017年まで成因の約半分を占めていたHCVを上回り,第一位となった。本邦では高頻度に見られるALDH2遺伝子の変異は飲酒習慣やアルコール依存症のリスクと関連し,多様な健康影響をもたらすことが報告されている。またアルコールと肥満はそれ単独で肝障害の原因になるだけでなく,脂肪性肝疾患が背景にある場合はウイルス性肝炎疾患と同様にアルコール少量でも肝病態を増悪させる可能性がある。アルコール依存症では遺伝的および臨床的背景を考慮の上,アルコール関連問題の取り組みが必要である。
「KEY WORDS」アルコール性臓器障害,アルコール性肝硬変,アルコール性脂肪肝,アルコール関連肝疾患
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。