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Special Topics

災害弱者としてのアルコール使用障害者―COVID-19パンデミックに着目して―

野田哲朗

Frontiers in Alcoholism Vol.11 No.2, 34-36, 2023

災害大国の日本だが,災害精神医学に関心が持たれるには,1995年1月の大都市を被災地とした阪神・淡路大震災を待たなければならなかった。
阪神・淡路大震災では,被災地とその周辺地域に無数の避難所と仮設住宅が建設され,「こころのケア」という用語が生まれ,それまで関心の薄かった心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder:PTSD)に注目が集まった。しかし,PTSDは質問調査などでは把握できるが,被災者が自ら症状を訴えることはほとんどなかった。
当初より問題になったのは,避難所に流入した支援物資に含まれていた酒類により特に未治療のアルコール使用障害(alcohol use disorder:AUD)者が逸脱行動を起こすことであった1)。また,避難所解消後の応急仮設住宅では,中高年男性の孤独死が問題となり,そのほとんどが震災前からの問題飲酒者であったと推測された2)
震災後5年間の時限で設立された兵庫県精神保健協会こころのケアセンターの活動でも,災害前より問題飲酒のある被災者が仮設住宅に集積するため,支援に苦慮したとする報告があり3),その後の災害でも同様のことが発生している。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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