特集 アルコール依存症治療における断酒と飲酒量低減
3.仮想症例から断酒と減酒の使い分けを考える
Frontiers in Alcoholism Vol.10 No.1, 19-23, 2022
従来のアルコール依存症治療では,主に重症のアルコール依存症患者を対象としてきたことから,どうしても断酒を唯一の治療選択肢とせざるを得なかった。しかし最近は予防医学的観点から,より軽症,より早期のアルコール依存症患者に介入し,重症化を防ぐ重要性が再認識されるようになった。加えて,近年アルコール依存症のなかには,さまざまな外傷体験(児童虐待など)や発達障害,うつ病などの精神科的問題を抱えた人々がおり,生きづらさを解消する手段としてアルコールを用いているという患者理解が進んできた。このため,断酒一辺倒ではない多様な治療選択肢が求められている。しかし,飲酒欲求のコントロールが困難な依存症患者に対して,断酒と減酒を上手に使い分けることは容易ではない。そこで本稿では,2018年に改訂された『新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン』を基にして,仮想症例を用いて断酒と減酒の使い分けを考えることとする。
「KEY WORDS」アルコール依存症,断酒,減酒,ガイドライン,仮想症例
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。