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特集 メスを使わない美容皮膚科はどこまで進歩したか?

3 ボトックスの進歩

古山登隆井上香

WHITE Vol.7 No.1, 21-30, 2019

シワに対する治療を希望する患者は年々増加している.中でもボツリヌストキシン(以下,BoNT)を用いた注入療法は,安全かつ短時間で効果を得られる治療法で,その施術数は近年特に増加傾向にある(図1).BoNTによる筋弛緩作用のヒトへの治療は,1977年Scottらにより初めて斜視の治療1)にA型ボツリヌストキシン(以下,BoNTA)が使用された.その後眼瞼痙攣2)などの眼科領域の疾患においても,効果が確認され,標準的な治療になっている.美容形成外科分野に関しては,1992年Carruthersらが眉間の表情シワに対する効果3)を報告し,シワ取りの治療法としてのBoNTの使用が広がっている.現在,医療品として製剤化されているのは,A型とB型ボツリヌストキシンである.わが国における薬剤の適応症は,眼瞼痙攣,片側顔面痙攣,痙性斜頸,上肢痙縮,下肢痙縮,2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足,重度の原発性腋窩多汗症,斜視4)である.美容においては,2009年1月に米国Allergan社のBoNTA製剤「ボトックスビスタ®」が美容目的の医薬品として,65歳未満の成人において眉間の表情シワに承認され5),また2016年5月,「ボトックスビスタ®」が65歳未満の成人における目尻の表情シワ6)に対して追加適応を取得した.2017年には,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)にて中等度~重度の額のシワ治療の承認を取得している.わが国で使用されている未承認のBoNTA製剤として,ディスポート®(英国・Ipsen社),ニューロノックス®(韓国・Medy-Tox社),ゼオミン®(ドイツ・Merz Pharmaceuticals社),BTXA™(中国・Lanzhou社),ニューロブロック®(米国・Solstice Neuroscience社)(表1)などがあるが,日本人における有効性と安全性のデータを有さないので,使用は医師の裁量に任されている.
美容分野におけるBoNTの使用法は,現在のところ大きく分けると3種類あると考えている.第1には表情シワに対して表情筋を減弱化させる目的で行うもの.第2には,筋肉肥大に対して使用し,筋肉を減量させたり,拮抗する筋肉を弱めることで形態を変化させるもの.第3には,多汗症のような機能を変化させるために行うものなどがある.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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