特集 女性と乳腺疾患
5 乳癌患者における骨転移,骨合併症の治療
WHITE Vol.6 No.1, 35-41, 2018
種々の悪性腫瘍で骨転移が認められ,特に乳癌,前立腺癌,肺癌などは剖検時には50%以上の患者で骨転移が観察される.また初再発部位の内,乳癌では4分の1が骨転移とされている.2000~2008年までに当院で治療した進行再発乳癌患者528例の中で治療開始時に骨転移が49.8%,骨のみの患者が14.8%であった.一般的に,椎体,骨盤,肋骨,頭蓋骨,上腕骨,大腿骨など体幹または四肢の近位に高い頻度で転移することが示されている.
がんの骨転移は生命予後に大きな影響を及ぼさないが,激しい痛みに加えて,病的骨折,脊髄圧迫による麻痺症状,高カルシウム血症,手術などの骨関連有害事象(skeletal-related events:SRE)により患者のQOLは著しく低下し,さらには死亡リスクが上昇する場合もある.当院において1990年代に乳癌骨転移患者256例を1,184日間追跡調査したところ,骨痛が77.5%,病的骨折が39.2%,神経麻痺が9.8%,高カルシウム血症が40.9%,骨X線照射が60.6%の発現率であった.骨転移は,それ自体が致命的となることは少ないものの,上記の骨合併症によるQOLの低下につながるため,骨転移の発現・進行をいかに防ぐかが重要である.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。