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特集 女性と乳腺疾患

3 リンパ浮腫と最新治療

伊藤蘭

WHITE Vol.6 No.1, 23-28, 2018

リンパ浮腫は,四肢に発生することの多い慢性進行性疾患であり,間質に余剰な体液やたんぱく質沈着物が蓄積し1),リンパ管の低形成やリンパ管の損傷によるリンパ排液路の閉塞に起因する2).患者は痛みやだるさ,腫れによる不快感を訴え,さらには感染を繰り返し,生活の質を著しく損う3).先進国では,がん手術に付随したリンパ節郭清や放射線治療後に生じることが多い4-7).乳癌関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)は乳癌患者の10~50%に発生し8-10),決して珍しい疾患ではない.乳癌手術後の数日~30年の期間内に,手術側の上肢に発生すると言われている.BCRLの主な危険因子は,放射線照射や腋窩リンパ節郭清であり,さらには切除されたリンパ節の数も関係している8).通常リンパ液は末梢のリンパ管を通り,腋窩リンパ節を介して静脈へドレナージされている.腋窩リンパ節が切除され,また放射線照射によりリンパ管が破壊されることで,リンパ液が排液路を失い間質に浸み出すことで発症する.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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