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Lecture レクチャー

変形性膝関節症の痛みに対する薬物療法

梅原憲史三谷茂

Locomotive Pain Frontier Vol.2 No.2, 14-18, 2013

変形性膝関節症の薬物療法としては,経口内服薬や坐剤,外用薬,注射などがある。日本整形外科学会からは,Osteoarthritis Research Society International(OARSI)ガイドライン1をもとに,変形性膝関節症に対する診療ガイドライン(表1)が公表されている。高齢化社会とともに増加しつつある変形性膝関節症に対して,薬物療法はその効能と副作用を理解し,適切に使用されなければならない。

Key words:変形性膝関節症,経口内服薬,関節内注射

経口内服薬

1.非ステロイド抗炎症薬
(non-steroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)

 わが国で最も多く使用されている経口内服薬である。変形性膝関節症に対する診療ガイドライン(表1)では,推奨度はAである。

NSAIDsの機序としては,組織損傷によりホスホリパーゼA2が活性化し,この活性化によって細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が遊離され,遊離されたアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)活性によりプロスタグランジンG2(prostaglandin G2;PGG2)に変換され,PGG2はペルオキシダーゼ活性によってPGH2に変換される。その後,細胞質に移動したPGH2は,各種酵素によってプロスタグランジン(PG)類やトロンボキサンA2(thromboxaneA2;TXA2)へ代謝される(図)。

各代謝産物には,それぞれの生理活性を有する。COXには組織に常時発現していて腎血流維持,血管拡張,血小板凝集,胃粘膜保護などの生体の恒常性維持に必要なPGを産生しているCOX-1と炎症反応によって誘導されてくるCOX-2という,少なくとも2つのアイソザイムが存在していることが知られている。したがって,NSAIDsの副作用は,主にCOX-1による恒常的なPG合成を阻害することによる,消化管障害,腎障害,血小板凝集抑制などがある。そのほか,喘息などにも注意が必要である。このことから,炎症時に発現誘導されるCOX-2を選択的に阻害することが,NSAIDsの抗炎症効果と副作用を分離すると期待された。しかし,鎮痛効果が不十分で,心血管障害のリスクを高めることなどが指摘され,COX-1も阻害する非選択的NSAIDsの処方が必要となってくることもある(非選択的NSAIDsにもある程度心血管障害リスクは認められる)。
 NSAIDsは前述したように,非選択的NSAIDsとCOX-2選択的阻害薬の2つに大きく分類されるが,化学構造による分類としては,酸性系のサリチル酸系,フェナム酸系,アリール酢酸系,プロピオン酸系,オキシカム系,ピラゾロン系等と塩基性系に分類される。NSAIDsの大部分は酸性である。塩基性NSAIDsは,鎮痛効果が低いがアスピリン喘息の患者にも比較的投与可能である。
 副作用である消化管障害の対策としては,Drug Delivery System (DDS)の開発があげられる。DDSとは必要な薬物を必要な時間に必要な部位に発現させるためのシステムのことでさまざまな工夫がなされている(表2)。

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