Focus
トルバプタンが奏効した拡張型心筋症の1例
Fluid Management Renaissance Vol.1 No.2, 90-93, 2011
症 例
84歳,男性。
主 訴:呼吸困難。
既往歴:腹部大動脈瘤(2010年Y-grafting),慢性心房細動,慢性腎臓病(CKDステージ3)。
家族歴:特記事項なし。
現病歴:拡張型心筋症,慢性心不全(NYHA分類Ⅲ度)にて外来通院中。2009年より慢性心不全の増悪にて入退院をくり返している。2011年1月14日,呼吸困難が悪化したため救急車にて搬送となった。
外来での主な投薬内容:フロセミド40mg,スピロノラクトン25mg,カルベジロール2.5mg,ワルファリン1mg。
入院時現症:身長171cm,体重64.9kg,血圧117/82mmHg,心拍数104回/分(不整),SpO2 92%(room air),頸静脈怒張あり,全肺野に水泡音聴取,心音…Ⅲ音(+)心雑音聴取せず,四肢末梢の冷感はなく,下腿に著明な浮腫あり。
検査所見:WBC 5,500/μL(Seg 77%),RBC 367×104/μL,Hb 11.4g/dL,Ht 36.5%,Plt 14.7×104/μL,GOT 33IU/L,GPT 26IU/L,LDH 249IU/L,T-Bil 1.6mg/dL,T-P 6.9g/dL,Alb 3.5g/dL,BUN 23.9mg/dL,Cr 1.06mg/dL,CPK 35U/L,CPKMB 6.0U/L,CRP 2.55mg/dL,T-cho 149mg/dL,LDL-C 89mg/dL,HDL-C 39mg/dL,TG 65mg/dL,BS 197mg/dL,Na 143mEq/L,K 4.0mEq/L,Cl 107mEq/L,H-FABP(+),Troponin T(-),H-BNP 1,626.3pg/mL。
心電図:心房細動,心拍数109回/分,軸…正常,V1~V3
poor R progression。
胸部レントゲン(図1A):心胸比68%,肺野…両側にうっ血像(+)。

心臓超音波:LVDd/Ds 60.1/50.1mm,EF 28.0%,IVS/PW 10.1/10.7mm,LAD 43.8mm,TRPG 35mmHg,AR 2°,MR 3°(弁輪拡大に伴う弁接合不全あり),IVC拡大(呼吸性変動消失)。
治療経過
拡張型心筋症(左室駆出率28%)を基礎心疾患とした慢性心不全の増悪と診断し,入院治療を開始した。入院後,内服利尿薬は継続とし,トルバプタン15mgを追加したところ,投与開始4時間後から250mL/時を超える利尿が得られた。投与開始16時間後の採血にて血清Na濃度が143mEq/L→149mEq/Lと増加し,口渇の訴えも認めたため飲水制限を800mL/日→1,200mL/日に緩和した。投与2日目には5,330mL/日と著明な利尿が得られ,心不全徴候も改善したため飲水制限を中止とし,5%ブドウ糖液の点滴を追加した。トルバプタン15mgを3日間継続し,その後7.5mgに減量したが尿量は2,000mL/日程度得られ,体重も徐々に減少した(図2)。

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