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ガイドライン改訂のPoints

DHHSガイドライン改訂のポイント

白阪琢磨

HIV感染症とAIDSの治療 Vol.10 No.1, 19-25, 2019

前回(2018年5月号),本コーナーを執筆して以後,DHHSガイドラインは2018年10月と2019年7月の2回の改訂1)2)がなされ,HIV感染症の治療の進歩は著しい。現在では適切に治療を受けているHIV陽性者の余命は非感染者のそれと大差ないまでになり,HIV感染症は文字通り慢性疾患となった。最近では,抗HIV療法の服薬アドヒアランスに問題がなく,血中ウイルス量が感度未満を半年以上の間,継続できていれば,パートナーに性行為でも感染が示されなかったという大規模臨床研究の結果3)-5)が報告され,これは「U=U(Undetectable=Untransmittable)」キャンペーンとしてHIV陽性者の人権問題との視点から世界で展開されている6)
1981年に米国から原因不明の免疫不全症(のちに後天性免疫不全症候群:AIDSと命名)が報告され,病原体であるHIVが1983年に発見された。1985年にはHIVに対する抗体検査が承認され,同年,満屋裕明博士らが米国立癌研究所で世界最初の抗HIV薬ジドブジン(AZT)を報告し,HIV感染症の臨床が現実のものとなった。その後,HIV感染症の治療の分野で多くの進歩があったが,1996年,カナダのバンクーバーで開催された第11回国際エイズ会議で,RT-PCR法によるHIV-1のウイルス量の半定量の報告や,新たなクラスであるHIV-1プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor;PI)の報告という新時代を切り開く発表があり,それらの成果を基に,抗HIV療法のガイドラインが世界に提示された。当時,highly active antiretroviral therapy(HAART)と呼ばれた抗HIV薬3剤以上の多剤併用療法は,やがてanti-retroviral therapy(ART)と呼ばれるようになったが,治療の本質は変わっていない。1997年11月には米国保健福祉省(Department of Health and Human Services;DHHS)らによる「成人および青少年HIV-1感染者における抗レトロウイルス薬の使用に関するガイドライン(以下,DHHSガイドライン)」が作成され,インターネット上のDHHSのホームページに提示された。DHHSガイドラインは抗HIV療法の進歩とともに,毎年のように改訂されてきた。本項ではガイドラインの改訂上のポイントに焦点を絞って概説する。一部意訳した部分があることをご了承いただきたい。DHHSガイドラインはHIV感染症治療の最新の教科書ともいえるので,是非,一読されたい。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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