Case Report 症例報告
フェンタニル貼付剤が有効であった腎不全合併の慢性難治性腰痛の1例
Durotep® MT Patch well-worked for chronic intractive low back pain with renal failure; a case report
Practice of Pain Management Vol.2 No.4, 56-57, 2011
はじめに
人工透析中で,腰椎除圧固定術後に約2年間持続した慢性難治性腰痛の患者に対して,フェンタニル貼付剤(デュロテップ® MTパッチ)を投与して疼痛が軽快した1例を経験した.一般的に,腎不全患者では薬物の用量調節が難しく,治療効果を得ることが困難であることが多いが,本剤は腎不全合併例の慢性難治性疼痛の患者にも有効であったので報告する.
症例 53歳 女性
主訴
慢性腰痛
既往歴
ネフローゼ症候群による慢性腎不全のため約15年の人工透析歴があり,現在も透析治療中である.
治療経過
2008年頃より腰部脊柱管狭窄症による両下肢痛と腰痛がみられ,2009年にpedicle screw systemを併用したL3-5の除圧固定術(図1)が行われた.その手術後に,両下肢痛は軽減したが,腰痛は持続した.
患者は,腎不全があるために,通常量での投薬が行えず,鎮痛薬,筋弛緩薬,抗うつ剤などの薬物の用量は,一般成人の約3分の1,あるいは2分の1の量として処方された.外来で合計15種類の薬剤の投与を試みたが腰痛は軽快せず,理学療法および鍼灸も行ったが, 腰椎手術後2年経っても強い腰痛( 痛みのVisual Analogue Scale;VASで60~70mm,想像できる最大の痛みを100mmとして)が持続していた.その経過中において,患者―医師間の関係は良好であり,患者はなんとか痛みを減らしてほしいと訴え続けていたため,医療用麻薬でオピオイド鎮痛剤のフェンタニル貼付剤を試みることとした.
まず,われわれが遵守しているデュロテップ®MT パッチ導入マニュアル(図2)に従って,先行オピオイドであるリン酸コデインを1週間処方した.
すると, 痛みのVASが60mmから50mmに減少し,先行オピオイドの効果ありと判定し,フェンタニル貼付剤2.1mgに移行した.本剤は,肝代謝で腎臓に負担がかかりにくい薬剤であったこと,さらに飲み薬と異なって貼り薬であるため,患者の抵抗感が少なかったことから,比較的容易に切り替えが可能であった.
そのフェンタニル貼付剤投与1週間後には,痛みのVASが50mmから45mmに減少し,この時点で,嘔気や便秘はみられず,ドンペリドン(ナウゼリン®)や酸化マグネシウムの併用薬は不要となった.さらに患者は,友人と旅行に行きたいので,もう少し痛みを減らしてほしいと希望したため,フェンタニル貼付剤を4.2mgに増量した.その結果,痛みのVASが30mmとなり,旅行にも行くことができ, その後にフェンタニル貼付剤を2.1mgに減量したが,VAS 25~35mmを約1年間維持している.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。