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Topics of HCC

急激に変貌する肝癌の薬物療法

②免疫チェックポイント阻害薬(単剤)

古瀬純司

The Liver Cancer Journal Vol.10 No.1, 44-48, 2018

生体内の免疫反応を抑制するシステムである免疫チェックポイントが発見され,それを標的とした免疫療法が癌治療を大きく変えてきている。免疫チェックポイントには,樹状細胞によりT細胞が抗原特異的に活性化するのを抑制するcytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4(CTLA-4)と,T細胞と腫瘍細胞間の免疫反応を抑制するprogrammed cell death 1(PD-1)とそのリガンドPD-L1に分けられる。このCTLA-4あるいはPD-1/PD-L1を阻害する免疫チェックポイント阻害薬はまず悪性黒色腫で開発が行われ,CTLA-4阻害薬イピリムマブにより生存期間の延長が証明された1)。さらに,抗PD-1抗体薬ニボルマブやペムブロリズマブによる優れた抗腫瘍効果と予後の延長が得られ,大きく注目された2)3)。それ以降,ニボルマブとペムブロリズマブは多くの癌腫で臨床試験が進められ,次々と適応が承認されている。わが国ではニボルマブは悪性黒色腫,非小細胞肺癌,腎細胞癌,ホジキンリンパ腫,頭頚部癌,胃癌,ペムブロリズマブは悪性黒色腫,非小細胞肺癌,ホジキンリンパ腫,尿路上皮癌に保険適用となっている。さらに,2017年5月,米国において癌腫にかかわらずDNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficiency:dMMR)の腫瘍にペムブロリズマブの適応が承認されている。その他の抗PD-1あるいはPD-L1抗体薬アベルマブ,アテゾリズマブ,デュルバルマブによる臨床試験もさまざまな癌腫や病態において行われ,最近ではPD-1/PD-L1阻害薬単独からさまざまな薬剤や放射線治療との併用による複合免疫療法へと関心が移ってきている。
肝細胞癌においてもニボルマブとペムブロリズマブの単剤による臨床試験が行われ,現在は多くの抗PD-1/PD-L1抗体薬を中心に他剤や他治療との併用療法,複合免疫療法の開発が進められている。本項では肝細胞癌に対する免疫療法として,免疫チェックポイント阻害薬単独による治療成績を概説する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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