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臨床家の立場から視た肝癌のゲノム解析と病態生理
①肝癌の病態と関連する遺伝子変異
The Liver Cancer Journal Vol.9 No.2, 22-27, 2017
病態肝では肝炎ウイルス感染や代謝ストレスによりゲノム異常が蓄積し,発癌とその病態を決定すると考えられる。近年,全ゲノムシークエンスにより,p53/Rb細胞周期系,Wntシグナル系,PI3K/Rasシグナル系,クロマチン修飾系,酸化ストレス応答系およびTERT遺伝子プロモーターの変異が重要であることが示されてきたが,病態や治療効果に関連するゲノム変異はいまだ十分には明らかではない。筆者らの次世代シークエンスを用いた検討では,肝細胞癌の遺伝子プロファイルはC型およびnonBnonC型とB型肝細胞癌とでは異なり,TERTプロモーター変異は予後不良と関連することが示された。また,B型肝細胞癌と一部のHBV既往感染ではTERT領域へのHBV integrationが発癌に関連していることが示唆された。一方,C型肝細胞癌ではHCV排除の有無により遺伝子変異に差を認めなかったが,B型肝細胞癌ではHBV増殖抑制の有無により差を認めた。これら肝細胞癌の病態と関連する遺伝子変異を明らかとすることは,発癌機構を理解し対策を講じるうえで重要であり,今後,ゲノム情報に基づく新しい診断・治療・予防法の開発に向けた発展が期待される。
「KEY WORDS」肝細胞癌,発癌,癌遺伝子,ドライバー遺伝子,TERTプロモーター,TP53,CTNNB1,HBV integration,HCV
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。