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座談会(Round Table Discussion)

肝癌診療ガイドラインをめぐって

國土典宏久保正二建石良介山下竜也

The Liver Cancer Journal Vol.3 No.3, 13-22, 2011

わが国では,肝細胞癌に対する治療法の選択基準として,2つの治療アルゴリズムが利用されている。その1つは厚生労働省診療ガイドライン支援事業により2005年にまとめられた『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』の治療アルゴリズムで,もう1つは日本肝臓学会のコンセンサスに基づき2007年に作成され,2010年に改訂された治療アルゴリズムである。『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』の改訂版(第2版)は2009年に刊行され,外部評価委員による独立した評価を経て,次期改訂版(第3版)の作成に向けて準備が進められている。そこで,本座談会では肝癌診療ガイドライン改訂委員会の委員,そして外部評価委員の立場から,肝細胞癌に対する現行の診断・治療指針ならびに今後の改訂に向けた展望について討論いただいた。

[出席者,発言順]
國土 典宏(司会)
東京大学大学院医学系研究科
臓器病態外科学(肝胆膵外科学)教授

久保 正二
大阪市立大学大学院医学研究科
肝胆膵外科学准教授
 
建石 良介
東京大学医学部附属病院
消化器内科助教

山下 竜也
金沢大学大学院医学系研究科
地域医療教育学特任教授

はじめに

國土 わが国では,『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』(以下,ガイドライン)の初版が2005年に,その改訂版(第2版)が2009年に刊行され,臨床現場で広く用いられています。Evidence based medicine(EBM)を重視した診療ガイドラインは,3~4年ごとに新しいエビデンスを取り入れて改訂することが望ましいとされ,肝細胞癌においても次期改訂版(第3版)に向けた作業が開始される段階にあります。そこで,私とともに初版および第2版の作成に携わった内科系専門医の建石先生と山下先生,そして第2版の外部評価委員を務めた外科系専門医の久保先生にお集まりいただき,それぞれの専門的立場からガイドラインの動向についてご意見を伺っていきたいと思います。

現行ガイドライン(第2版)の特徴・改善点

1.外部評価の結果から

國土 最初に久保先生,第2版の外部評価における印象をお聞かせください。
久保 全体的に,エビデンスレベルの高い評価論文が少ないという印象を受けました。ただ,治療に関していえば,第2版作成以前に手術手技が確立していた肝切除はランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)による検証が可能ですが,ラジオ波焼灼療法(RFA)は当時まだ進展段階にあり,肝移植に至っては未知の領域でRCTの論文は皆無という状況でしたので,改訂作業において相当のご苦労があったと思います。
 また,世界的な評価ツールAppraisal of Guidelines for Research and Evaluation(AGREE)を用いた評価の結果,「対象と目的」,「作成の厳密さ」および「明確さと提示の仕方」は非常に優れていたものの,「利害関係者の参加」,「適用可能性」および「編集の独立性」は改善の余地がうかがえました(図1)。

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