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日本肝がん分子標的治療研究会

第3回優秀演題論文集 Session1 当科におけるソラフェニブ著効例の臨床的特徴

池上正齋藤吉史平山剛伊藤真典屋良昭一郎村上昌松﨑靖司

The Liver Cancer Journal Vol.3 No.2, 56-57, 2011

はじめに
 切除不能の進行肝細胞癌(HCC)に対するソラフェニブの投与1)2)は本邦における治療法の一つとして定着しつつあるが,奏効率,副作用などの点で解決すべき問題点はまだ多い。当院では,保険収載後現在までに13名の症例に対して同剤を投与しており,著効を示した症例を2例経験している。これらの症例の経過・臨床的特徴を含め,当院における同剤の使用経験を報告する。

症 例

■症例1:73歳,男性。
現病歴:C型肝硬変。抗ウイルス療法を受けた既往はなく,前医にて初回診断時に両葉に多発腫瘍。初回治療として肝動脈化学塞栓療法(TACE)を選択した。経過観察中6ヵ月目に血尿が出現,泌尿器科を受診し膀胱腫瘍が発見され,経尿道的切除術(TUR)を施行された。治療終了後,再度画像診断を施行したところHCCが進行していた。
既往歴:特記事項なし。
血液生化学検査所見:WBC 2,900,Hb 14.2g/dL,血小板数14.8万,Alb 3.2g/dL,T-Bil 1.0mg/dL,PT 97%。ウイルスマーカーはHBs抗原陰性,HBc抗体陰性,HCV抗体陽性。腫瘍マーカーはAFP 183.5ng/mL,PIVKA-Ⅱ 48.3mAU/mLと上昇を認めた。
画像所見:腹部造影CTにて,肝両葉に多発する多血性病変を認めた。
臨床経過:TACEでのコントロールは不能と判断しソラフェニブ投与(800mg/日)を開始。治療開始後3ヵ月目には腫瘍マーカーはそれぞれAFP 5.5,DCP 28となり,画像上多血性病変の消失,壊死を認めた。また,腫瘍の縮小に伴って肝容量は減少傾向にあり,胸水の貯留を認めたが,modified RECIST基準にて部分寛解(PR)と判定した(図1)。

問題となる有害事象(AE)は認めず800mg/日で継続していたが,6ヵ月後からは経済的理由などで減量,400mg/日を維持量として,現在360日まで投与継続中である。腫瘍マーカーや画像所見に変化を認めていない。

■症例2:63歳,男性。
現病歴:健康診断で肝機能障害を指摘され,前医を受診し腹部エコーを受けたところ,肝内腫瘤を指摘され精査目的にて当院を受診した。
既往歴:特記事項なし。
血液生化学検査所見:WBC 5,000,Hb 13.9g/dL,血小板数10.5万,Alb 3.6g/dL,T-Bil 1.2mg/dL,PT 95%。ウイルスマーカーはHBs抗原陰性,HBc抗体陰性,HCV抗体陽性。腫瘍マーカーはAFP 498ng/mL,PIVKA-Ⅱ 5,571mAU/mLと上昇を認めた。
画像所見:腹部造影CTにて,肝両葉に多発する多血性病変を認めた。門脈右枝内に腫瘍塞栓を認め,Vp3と診断した。
臨床経過:Child-Pugh score 5点,脈管浸潤を伴う多発性HCCと診断し,初回治療からソラフェニブの適応と判断,800mg/日で投与を開始した。Grade2のHFSRのため,1ヵ月目から400mg/日に減量した。HFSRの回復を待って再び800mg/日に増量すると再燃傾向があり,600mg/日にて維持量とした。腫瘍マーカーは,2ヵ月後にはAFP 88, DCP 594.1と低下。フォローアップの腹部造影CTでは,投与開始後2ヵ月目から,腫瘍血流の消失,壊死と考えられる低吸収領域(LDA)への変化が認められ,modified RECIST基準にてPRと判定した(図2)。

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