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癌分子標的治療:歩みと今後

Ⅱ.カテゴリー別 癌分子標的治療薬 mTOR阻害薬・プロテアソーム阻害薬

古瀬純司北村浩廣川智高須充子長島文夫

The Liver Cancer Journal Vol.3 No.2, 41-46, 2011

用語解説
●mTOR
Mammalian target of rapamycin(mTOR)はラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼである。細胞増殖シグナル伝達路のPI3K-Akt経路に属し,細胞の分裂や成長,生存における調整因子としての役割を果たしている。

●ユビキチン-プロテアソームシステム
プロテアソームは細胞の細胞質および核内に分布する巨大な酵素複合体であり,細胞内で不要になったたんぱく質の分解を行っている。ユビキチンにより標識されたたんぱく質をプロテアソームで分解するシステムはユビキチン-プロテアソームシステムと呼ばれる。ユビキチンが不要なたんぱく質に結合し,プロテアソームはユビキチンを認識することでそのたんぱく質を分解し,細胞を健全な状態に保つ働きをしている。

キーワード
●PI3K-Akt経路 ●mTOR阻害薬 ●ラパマイシン ●エベロリムス
●ユビキチン-プロテアソームシステム ●プロテアソーム阻害薬 ●ボルテゾミブ

はじめに

 がんの増殖,転移,進展の分子生物学的メカニズムが明らかになり,さまざまな分子標的をターゲットとした薬剤が創薬されてきている。ラパマイシンはマクロライド系抗生物質であり,細胞増殖に関する細胞内のシグナル伝達路の一つPI3K-Akt経路を阻害することが知られている。その経路のなかで,mammalian target of rapamycin(mTOR)はラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり,PI3K-Akt経路において細胞の分裂や成長,生存における調整因子としての役割を果たしている(図1)1)。

mTOR阻害薬はPI3K-Akt経路のシグナル伝達を阻害することにより,抗腫瘍効果を発揮する。これまでいくつかのmTOR阻害薬が開発されており,すでに免疫抑制剤として臓器移植で用いられていた。最近は腎細胞癌などで抗腫瘍薬としても有用性が示され,保険適応に承認されている。
 生体内では日々不要あるいは異常なたんぱく質が生じており,そのまま体内に留まっているとさまざまな不都合が生じる。それらの不要なたんぱく質を分解除去するシステムがユビキチン-プロテアソームシステムである。プロテアソーム阻害薬は癌細胞内のプロテアソームを阻害し,不要なたんぱく質を蓄積させることで抗腫瘍活性を発揮するものである。
 これらの薬剤はすでに実際の臨床で用いられている。さらに肝細胞癌でも臨床試験が進められており,今後の開発が期待されている。本稿では,mTOR阻害薬およびプロテアソーム阻害薬の特徴と臨床開発の現状を述べる。

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