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日本消化器関連学会週間(JDDW)

第18回日本消化器関連学会週間(JDDW)

田中弘教

The Liver Cancer Journal Vol.3 No.1, 55-57, 2011

 第18回日本消化器関連学会週間(Japan Digestive Disease Week;JDDW)が,2010年10月13日より16日までパシフィコ横浜で開催されました。

今回は,第52回日本消化器病学会大会(林紀夫会長),第80回日本消化器内視鏡学会総会(一瀬雅夫会長),第14回日本肝臓学会大会(中沼安二会長),第48回日本消化器がん検診学会大会(樋渡信夫会長),第41回日本消化吸収学会総会(宮坂京子会長)に加えて,第8回日本消化器外科学会大会(佐々木巌会長)も合同の開催となったため,これまでにも増して規模の大きい学会となりました。会員数は延べ9万人以上で,今回の参加者は19,884人と約2万人の過去最大のものとなりました。そのため国際会議場からアネックスホールまでという,まさにパシフィコ横浜の端から端までの移動もしばしばあり,その移動も大変な学会でありました。しかしそれ以上に私のような内科医にとって有意義であったのは,外科サイドの発表が多かったことであります。これまで以上に外科医の発表を拝聴することができ,より消化器外科に親近感をもつことができました。また主題テーマ数も豊富であり,シンポジウム30,パネルディスカッション26,ワークショップ36をはじめ,99の企画があり,必ずどの開催日にも関心のある領域があり,個人的にも非常に勉強になった学会でありました。

 さて今回のレポートの目的である肝癌に関しては,初日午前より東京医科歯科大学の有井滋樹教授,近畿大学の工藤正俊教授が司会されたシンポジウム1「肝細胞癌治療のこれからの展開」にて,各領域のリーダー的施設の先生方によって活発な討議がなされました。 
 まず大垣市民病院の熊田先生が,2008年1月より使用可能となったEOB-MRIの肝癌診断における問題点について指摘されました。EOB-MRIでは,これまでのモダリティでは得られなかったような高い感度が得られることがわかってきておりますが,偽陽性に対してどう対応すべきかについては,まだ十分な結論が出ておらず,この話題は翌日のワークショップ10でも関心が集まっておりました。EOB-MRIが非常に高感度な肝癌検査法であることについては,すでに議論の余地はないようでありましたが,MRI機種のみならず,スループットの問題も施設間により大きく異なるのが現状であり,難しい問題ではありますが,今後は統一化したプロトコールの作成が望まれると思われます。
 次に東京大学の椎名先生が,東大消化器内科の膨大なラジオ波焼灼療法(RFA)の経験より,高い局所制御のみならず,改めて治療効果判定時の十分な安全域の確保が重要な点を強調されました。同時に安全域の十分でない施設が多い点も指摘されておられました。興味深い内容としては,きっちりとした治療が行われたならば,腫瘍径はさほど局所再発に影響せず,むしろPIVKAによる悪性度評価が有用であることが示されました。翌日のワークショップ10でも,椎名先生はCTやMRIがリアルタイムに超音波画像と同期するVolume Navigation機能(GE社)を使用することで,症例数や経験の少ない施設の経験値を補うことができることを指摘されました。全世界的に最もRFAの症例数の多い日本では,これからも世界でトップレベルの成績を出し続けてゆく必要があり,そのためには各施設の精度管理も重要であると思われます。ここで筑波大学の福田先生がご発表された,SPIO-MRIを利用したRFA効果判定は,腫瘍部と安全域を明瞭に判別可能であることを示されました。EOB-MRIを使用した同様の検討も,順天堂大学練馬病院の大久保先生や鳥取大学の孝田先生からも発信されるようになってきており,今後これらの利点や欠点が明らかとなることが望まれます。SPIOの利点として腎機能不良例でもガドリニウム製剤と比較して使用しやすいことがあり,腎機能不良症例でのガドリニウム製剤の使用制限が厳しくなっていることからも,この点は重要なポイントとなってくるものと考えられます。
 昨年よりの最大のトピックである分子標的薬治療の有用性は,杏雲堂病院の小尾先生が示されました。高齢肝癌患者の多い日本では800mgで開始することが困難な症例も多く,400mgでの投与開始の可能性についても検討されておられました。初期の離脱を最小限にできているという報告は大変興味深い内容であり,これらソラフェニブ(ネクサバール®)の日本人に対する適切な使用法の早急なコンセンサスが望まれます。これに対して,以前より動注化学療法で良好な成績を発表している公立八女総合病院の永松先生は,40%以上でTumor Freeを導くことができるという自施設の成績を報告されました。動注化学療法は内服のみと比較すると煩雑であり,治療後に肝予備能が低下しやすいことも示されております。しかし,これらを差し引いても,非常に魅力的なデータでありました。この動注化学療法が,血管内治療(interventional radiology;IVR)技術の格差が大きい海外でこの成績が認知されるのは容易ではありませんが,日本から発信すべき治療法であります。現在日本で前向き試験の進んでいる分子標的薬と動注化学療法の結果が待たれます。
 局所治療後の再発率を抑える取り組みについては,武蔵野赤十字病院の土谷先生が抗ウイルス療法の有用性を示されました。これはわれわれ内科医にとって非常に重要な視点であり,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)に対するインターフェロン(IFN)やB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)に対する核酸アナログのみならず,非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)や脂肪肝,糖尿病,インスリン抵抗性,さらには潜在性HBV感染の影響などを十分検索し,治療を検討することが重要であり,ワークショップ25「非B非C型肝癌の現状と問題点」やポスターでも,このテーマに関して多くの発表がありました。
 新たな分子標的薬の動きもありました。千葉大学の金井先生は,肝動脈塞栓療法(TAE)後に血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-2,血小板由来増殖因子受容体(PDGFR),線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であるTSU-68を投与する第Ⅱ相臨床試験の結果を示されました。副作用も少なく病勢コントロール率51%という成績であり,Child-Pugh分類Bに対しても適応になる期待もあることなど,今後の展開が望まれます。国立がん研究センターの萩原先生はソラフェニブとシスプラチン動注化学療法の併用療法を発表されました。両者を併用することに対する論理的背景についての疑問を呈する意見もありましたが,その成績には期待ももたれ,今後の進展が望まれます。
 このシンポジウムの最後の4演題は外科よりのものでありましたが,東京医科歯科大学の田中先生は分子標的治療候補としてのAurora Bの有用性について,また九州大学,京都大学,東京大学は肝細胞癌の移植のオピニオンリーダーとしての意見を活発に発表されていました。臓器移植法が改正されて,脳死肝移植が増えてきているということは,今後の移植医療に明るい話題でありました。移植基準については,東京大学と京都大学で素晴らしい成績がそれぞれ提示されておりましたが,最後に坪内先生の特別発言でもあったように,日本における共通のクライテリアが望まれると感じました。
 第2日目は,私の発表が午前中のワークショップ11「肝がんハイリスク群のスクリーニングと経過観察」(司会 田中幸子先生,森山光彦先生),午後からはワークショップ10「肝細胞癌に対する画像診断の進歩と新たな治療戦略」(司会 今井康陽先生,村上卓道先生)にあり,この2つのセッションに朝から夕方まで参加しておりましたので,あっという間に1日が終了したと感じました。肝癌のスクリーニングに関しては,実際のスクリーニング方法や期間について,各施設の現実的な対応とともに議論されました。スクリーニングには各施設の状況により差異はあるものの,最後の演者間の討論でもEOB-MRIが少しずつ根づいてきたものと思われます。また造影超音波検査(造影US)は費用効果的であり,これを上手に使用できれば,将来的にはMDCTの代わりにEOB-MRIと造影USがスクリーニングの柱となってくるものと考えられました。また演者の施設の腫瘍マーカーの使用方法は,AFPとPIVKA2の両者を測定しているところがほとんどでありました。スクリーニングの間隔については,実際には3ヵ月ごとはなかなか難しいという意見もあり,「確実な検査ができていれば」という条件の下では6ヵ月程度まで延長できるのではないかとの見解が示されました。どのような対象をいわゆるスーパーハイリスク群とするかについては,統一した見解を出すことは容易ではありませんでしたが,以前より指摘されているような年齢,アルコール,肝脂肪化,HBc抗体,線維化進行度などを勘案しながら慎重な対応を行うのがやはり現状であると考えられました。
 午後からの画像診断の進歩を主題としたワークショップでは,14演題もの興味深い演題が選定されていました。話題の中心はEOB-MRIではありましたが,そのほかにも倉敷中央病院の利國先生の発表された4D超音波を応用した肝癌に対するRFAは,より正確な治療が求められる現在の医療情勢において,今後さらに期待がもたれるものと考えられます。東京大学の石沢先生の発表されたインドシアニングリーン(ICG)による蛍光法を使用した肝癌の手術中の画像は,今後の検討は必要とのことではありましたが,肝癌が明瞭に浮き上がって見えてくる様子は非常に印象的でありました。最近,乳腺外科や血管外科などさまざまな領域で検討されている方法であり,さらなる発展が期待される手法でありました。

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