【症例】

40歳代。

現病歴:左乳房腫瘤を自覚して近医を受診。穿刺吸引細胞診で悪性が疑われがん研究会有明病院へ紹介受診。

家族歴:特記すべきことなし。

既往歴:特記すべきことなし。

来院時所見:左のA領域に約25mm大の境界不明瞭な腫瘤を触知した(図1)。

「1 初診から治療方針の決定まで」1.初診,画像による鑑別診断

五味(司会):今回は転移再発乳癌における,原発巣と転移巣のサブタイプ乖離例について検討します。主治医の立場から小林心先生(がん研有明病院),腫瘍内科医の立場から伊藤良則先生(がん研有明病院),病理医の立場から笹野公伸先生(東北大学),そして画像診断医の立場からは私,五味(がん研有明病院)が参加します。それでは小林先生から,症例提示をお願いします。

小林:症例は42歳の女性です。自宅にて左乳房腫瘤を自覚されて近医を受診し,細胞診で悪性が疑われたことから当院へ紹介受診となりました。既往歴や家族歴に,特記すべきことはありません。初診時には左のA領域に約25mm大の境界不明瞭な腫瘤を触知しました。腫瘤はpseudolipomatous様で硬く可動性は不良でした。