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胃癌診療の歴史

第24回 Finstererの生涯

岡島邦雄

胃がんperspective Vol.9 No.4, 64-70, 2018

二十世紀前半における胃癌の外科治療の世界史を辿るとき,WienのHans Finstererは避けて通ることのできぬ外科医である。彼の研究業績は執筆した多くの論文により周知されるところであるが,業績以外のことはあまり知られていない。今回は数奇な運命を生き抜いた彼の生涯を研究業績とともに追ってみたい。
彼の78年の生涯において,ある時期は研究に熱中するあまり“Monomanie(偏執狂)”といわれたこともあった。しかし,彼のおかれた環境は,研究者のものとして十分といえない場合も多く,その時その時に遭遇する障害を,彼は天性の努力と粘り強さ,無欲の創造力で切り抜け,終始その姿勢を変えることなく,外科医の本分を貫くという生涯を送った。その結果として,晩年には数々の栄誉を受け,その労が報われるという一生を送った。本稿ではその史実をH. Steindlの記述から紹介する1)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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