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State of the art(胃がんperspective)

スキルス胃癌に対する分子標的治療の展開

八代正和

胃がんperspective Vol.9 No.3, 16-21, 2017

代表的な難治癌であるスキルス胃癌は,明らかな腫瘤を形成せず癌細胞が豊富な線維組織増生を伴いながら広範囲びまん性に増殖・浸潤する硬い癌である。スキルス胃癌は胃癌全体の7%,進行胃癌の15% 程度である。胃癌の治療成績は向上しているが,スキルス胃癌の術後5年生存率は依然15%~20%程度にすぎず,スキルス胃癌の新規治療法開発は胃癌診療の重要課題である。
イマチニブによる癌分子標的治療分野のブレイクスルー以降,分子標的治療の発展は目を見張るものがある。スキルス胃癌においても分子生物学的特性を標的とした治療薬の開発が大いに期待される。しかしながら,スキルス胃癌の発生頻度が少ないためスキルス胃癌のみに限局した大規模な臨床試験はなく,スキルス胃癌に特化した分子標的治療薬の認可はまだない。したがって,今までに行われた胃癌臨床試験においてスキルス胃癌に類似する臨床病理情報のサブグループ解析からスキルス胃癌に対する治療効果を推察せざるを得ないのが実状である。スキルス胃癌は特徴的臨床像を呈するが,その分子生物学的特徴も最近明らかになってきた1)2)。スキルス胃癌の分子生物学的特性を標的とした治療法開発が有望と考える。本稿では,スキルス胃癌治療の現状と,今後期待される分子標的治療について述べる。
「KEY WORDS」スキルス胃癌,線維芽細胞, FGF 受容体(FGFR),TGFβ受容体(TGFβR),分子標的治療

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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