エキスパートの治療法―症例から考える―
術式選択(distal or total)に迷う症例
胃がんperspective Vol.7 No.1, 36-39, 2014
【症例提示 吉田昌(国際医療福祉大学三田病院外科・消化器センター准教授・外科部長)】
「症例」 年齢 性別 50代, 男性 診断 Gastric cancer, MU, less, cType O-llc, cT1b(SM), UL(+), 径6cm, 噴門からの距離4.5cm. 生検結果:Moderately differentiated adenocarcinoma Q. 1 (腹腔鏡手術を前提として)はじめから胃全摘術を選択しますか? 幽門側胃切除術を試みますか? A. <術中内視鏡の立場から> 本症例はMU領域の分化型SM癌と診断されています. 胃癌治療ガイドラインには, T1腫瘍では肉眼的に2cm以上の切離断端距離を確保するよう努める, とあります. 本症例は噴門から腫瘍口側辺縁まで4.5cmであると診断されておりますので, 小彎全摘を念頭にまずは幽門側胃切除術を試みてよいと考えます. <完全鏡視下手術(脱着型クリップ)の立場から> 本症例は早期胃癌(T1b)であり, かつ中分化型腺癌であることを考慮すると, 確実な切除およびリンパ節郭清により根治する可能性が非常に高いと判断されます.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。