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Q&Aで綴るレジデント・ノート―専門医がわかりやすく解説―

No.28 「MSI」とはなんですか?

冨田尚裕

大腸癌FRONTIER Vol.4 No.3, 100-102, 2011

Question
「MSI」とはなんですか?

Answer
MSIとは,microsatellite instability(マイクロサテライト不安定性)の略で,ミスマッチ修復系の異常を反映して,腫瘍細胞のDNAに認められる変化です。MSI検査は,それが約90%陽性を示すリンチ症候群の補助診断として有効であり,現在保険適応も認められています。一般大腸癌においても5~10%で陽性となるが,5-FU系抗がん剤の感受性との関連が示唆されています。

ミスマッチ修復系の異常とMSI

 細胞分裂の際のDNA複製においてはある確率で1~数塩基のミスマッチが生じ,DNA複製エラーとも呼ばれますが,それを修復する機構がミスマッチ修復機構(系)(mismatch repair system;MMR機構)です。そのMMR機構には関与する複数の遺伝子(MLH1,MSH2,PMS1,PMS2,MSH6など)が知られており,ミスマッチ修復遺伝子[mismatch repair gene(s);MMR遺伝子]と呼ばれます。代表的な遺伝性大腸癌であるリンチ症候群(Lynch syndrome)(別名:遺伝性非ポリポーシス大腸癌,hereditary non-polyposis colorectal cancer;HNPCC)においては,MMR遺伝子の生殖細胞系列変異があり,ミスマッチ修復系の異常によって,標的となる反復配列を有する癌関連遺伝子のTGF-βreceptor Ⅱ,BAXなどに変異が生じて発癌に至ると考えられています1)。
 一方,ヒトなど哺乳類のゲノム中には,1~数塩基の繰り返しからなる反復配列が散在していることが知られており,マイクロサテライト領域と呼ばれますが,ミスマッチ修復系に異常があると,腫瘍細胞のDNAにおいて,このマイクロサテライト領域に反復配列の個数の差による長さの変化が生じ,これがマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability;MSI)です。このMSIはPCR(polymerase chain reaction)を用いた解析で比較的簡便に検出可能であり,前述したリンチ症候群においては約90%に陽性となりますが,一般の大腸癌においても5~10%で陽性となり,MLH1遺伝子のプロモーター領域のメチル化によるミスマッチ修復系異常が原因と考えられています。

リンチ症候群の診断におけるMSI検査

 リンチ症候群は,大腸癌全体の3~5%を占め,大腸癌の若年発生,同時性・異時性大腸多発癌,大腸以外の多臓器重複癌などの臨床的特徴を有する重要な疾患単位でありますが,その約90%でMSI陽性となることから,本疾患のスクリーニングとしてMSI検査は重要です。リンチ症候群を疑ってMSI検査を行うことが推奨される大腸癌の基準として,国際的には表に示す改訂ベセスダ基準が提唱されています2,3)。

ここで推奨されるマーカーパネルとして5個のPCRマーカーがあげられていますが,一般に,2個以上(40%以上)陽性の場合をMSI-high(MSI-H),1個の場合をMSI-low(MSI-L),0個の場合をMSS(microsatellite stable)と判定します。ベセスダパネルの5マーカーを用いた実際のMSI解析例を図に示しました。

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