<< 一覧に戻る

治療とケア―症例から考える―

認知症との鑑別を要した高齢発症てんかん例

嵩原駿平松浦雅人

Epilepsy Vol.16 No.2, 33-36, 2022

主訴
記憶が抜け落ちる.
初診時年齢
70歳代,女性,右利き.
家族歴,既往歴
特記事項なし.
現病歴
X-3年,いま言ったこと,いまやったことを忘れることや,やかんの空だきをすることがあった.起床時,一時的に電話の使い方や衣類の位置がわからず,なにをしてよいかわからなくなる時間があった.近医を受診し,頭部CTおよびMRI検査では正常とされ,当院物忘れ外来を受診.物忘れを強く自覚し,自ら認知症ではないかと訴えた.HDS-R(Hasegawa dementia rating scale-revised)29/30点(遅延再生5/6点),脳波検査では入眠期に小鋭棘波(small sharp spikes:SSS)様の突発波が出現していた.認知症は否定的で経過観察となった.
X-1年に転居.その頃から起床後に「ここはどこ」と確認し,しばらくして気がつくエピソードがくりかえされていた.物忘れを過剰に苦にして常にメモを持ち歩いたが,日常生活に支障はなかった.
X年6月,記憶がまだらに抜け落ちることを主訴に,当院物忘れ外来を再受診.起床後を中心に数十分あるいは数時間,記憶が飛ぶという,一過性の健忘エピソードがくりかえされていた.また,1週間前に行ったカフェに「初めて来た」と言い,2週間前に会った人物に「久しぶり」と言った.1年前の姪の結婚式や,2年前の母の葬式,数年前の家族旅行の記憶がなく,写真を見ても思い出せなかった.明らかなてんかん発作は,本人,家族からの聴取では確認できなかった.記憶障害以外に日常生活に支障をきたすような症状はなかった.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る