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Special Articles(Epilepsy)

②TSCボードの実態

下野九理子

Epilepsy Vol.12 No.1, 13-17, 2018

結節性硬化症 (tuberous sclerosis complex;TSC) は腫瘍抑制遺伝子TSC1TSC2の異常によって起こる常染色体優性遺伝の疾患であり,わが国では4,000~12,000人の患者がいるとされる.TSC1TSC2の遺伝子異常により細胞増殖,細胞の成長を制御するmTOR pathwayが亢進するため,全身に過誤腫性の病変をきたす疾患である1)
症状は生涯にわたり,脳,心臓,腎臓,肺,眼,皮膚などの全身の多臓器に発現する.各症状の発現時期には特徴があるが,個人によって発現時期もその重症度も差が大きい.重症例では乳児期に発症し,全身の多臓器の症状をきたし,重度の知的障害と難治てんかんになる場合もあれば,軽症では診断されていないこともある.家族内でも症状の重症度には非常に差があることが知られている.
以前はTSCにおいては出現した病変・症状に対してそれぞれの専門家が対症療法を行うことが一般的であった.特に乳児期から小児期に発症するてんかんはTSC患者の70~90%に出現するとされ,てんかん発作をきっかけとしてTSCの診断がつくことが多かった.そのため,TSCの診療はてんかんの治療を行う小児神経科医を中心に行われてきた歴史がある.
しかし近年,胎児エコーの診断技術の進歩から,胎児期の心臓腫瘍や不整脈をきっかけとして出生前からTSCを疑われるケースが増えてきており,TSCの診療は保護者が何らかの症状に気づく前から始まるということになった.
一方,TSCの症状は年齢とともに変化し,多臓器にわたるために成人期になると臓器別の複数診療科で治療を受けるということになり,患者の負担は増える傾向にある.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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