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総説

新しい医療ビッグデータとドライアイ

猪俣武範

Frontiers in Dry Eye Vol.14 No.1, 16-19, 2019

ビッグデータとは,膨大なデータの集まりのことであり,一般にデータが多量,データの種類・形式が多様,データの発生・更新速度が迅速という3つの特徴を有する。これまでのビッグデータは巨大すぎて管理や分析が困難であるため活用されてこなかったが,近年の情報通信技術(information and communication technology:ICT)の進歩に伴い活用されるようになってきた。医療・健康分野においても例外ではなく,人の健康,病気,治療などに関するビッグデータは,医療の質の向上や効率化だけでなく,研究開発などのイノベーションに資するものとして期待されている。
医療では,電子カルテに記録された診療データや診療報酬明細書データ(レセプトデータ)を中心として電子化が進み,医療ビッグデータとして蓄積されるようになってきている。しかし,この医療ビッグデータにおいて「ビッグデータのパラダイムシフト」が起きようとしている。医療情報や疫学調査などの従来の医療ビッグデータからゲノム・オミックス医療やinternet of medical things(IoMT)デバイスをもちいたモバイルヘルスから収集される「新しい医療ビッグデータ」へと,医療ビッグデータはパラダイムシフトを迎えようとしている。
この従来の医療ビッグデータは集合的見地から医療事象を見るpopulation medicineを目的としていた。一方で,ゲノム・オミックス医療による網羅的分子情報やウェアラブル,生体センシングなどのIoMTデバイスを利用したモバイルヘルスによる新しい医療ビッグデータは先制医療やマスカスタマイゼーションによる多様な個別化医療を目的として,1個体(個人)に関する膨大なデータを取得する。先制医療や個別化医療を実現するためには,従来の集合的見地を個人に当てはめるone size fits for allの医療はもはや成り立たず,個別化のパターンを網羅的に調べるというパラダイムの転換が必要である。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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