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100歳まで生きるための本100選

第80選 『男の作法』

小沢洋子

アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.4, 60-61, 2020

受験勉強をしていたころ,勉強の合間にこっそりと時代劇の再放送をテレビで見るのが好きだった。そのときに見た時代劇のなかに池波正太郎のものがあり,大人になってからこの本に出合ったときにすぐさま手に取った。

この本は,東京・浅草生まれの池波正太郎氏が日々感じてきたことを語り下ろしたものである。「鮨屋に行ったときにはシャリだなんて言わないで普通にゴハンと言えばいいんですよ」とか「てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ」と言うかと思えば,「おこうこ(お新香:筆者注)ぐらいで酒飲んでね,焼き上がりをゆっくりと待つのがうまいわけですよ,うなぎが」といったタイトルで主に日々の食に関連した体験と信念が書かれている。そして,こういう食べ方が美味しく食べて,店主(シェフ)に気に入られるコツだというのである。作り手に気に入られれば,より美味しいものが出てくるかもしれない。言葉通り読めば,グルメ食べ歩きに役立つ食べ方のお作法にも聞こえる。そして,その意味でも確かに面白いのだが,私はこの本の意義はそれだけではないと思う。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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