誌上ディベート
乳酸菌は死菌? 生菌?
アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.3, 131-140, 2020
今回の誌上ディベートは乳酸菌がテーマです。乳酸菌は古くから種々の発酵食品に利用されており,食品の加工,調味,貯蔵に重要な役割を果たしてきました。また,ロシアのノーベル賞学者Mechnikovは20世紀初頭に,長寿者が多いブルガリア旅行中の見聞からヨーグルトに含まれる乳酸菌が長寿に有用であるとするヨーグルト不老長寿説を唱えましたが,ヨーグルト中の乳酸菌が生きて腸に届かないことが分かり,この不老長寿説は下火になったとされています。しかしながら,近年の研究から,生菌のみならず死菌や代謝産物も含めた乳酸菌による生体調節機能が明らかとなりつつあります。一方で,消化液耐性のある乳酸菌種が「宿主に有益な影響を与える生きた微生物」Probioticsとして,「生きて腸に届く」生菌にこだわった開発・応用もなされています。
そこで今回は,「乳酸菌摂取には生菌がいいのか? それとも死菌がいいのか?」という課題を用意させていただき,乳酸菌研究を精力的に推進されている,ニチニチ製薬の嶋田貴志氏とカゴメ株式会社の鈴木重德氏を招いてディベートを行っていただきました。両氏とも実際の研究では,生菌・死菌両者を扱い,その特徴を熟知されていますが,無理を申し上げて敢えて偏った立場で意見をいただきました。読者の皆さんも両氏の発信する興味深い内容を是非楽しんでください。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。