特別企画 特集 緊急“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策”
高血圧とCOVID-19~ACE2,レニン・アンジオテンシン系をめぐって
アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.3, 68-73, 2020
中国湖北省武漢市に端を発したcoronavirus disease 2019(COVID-19)の患者数は増加の一途をたどり,2020年5月3日時点で世界中の約350万人の人々が罹患して約25万人が死亡,わが国でも約15,000人が罹患して500人を超える患者が死亡している。COVID-19はsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)と命名された新型コロナウイルスの感染によって引き起こされ,そのヒトへの高い感染力がパンデミックの原因となっている。SARS-CoV-2は感染の際にアンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme:ACE)2を機能的受容体として利用する。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensinⅡ receptor blocker:ARB)とACE阻害薬がACE2の発現を増加させる可能性が指摘されたことより,これらのレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)阻害薬がSARS-CoV-2の感染力を高めるのではないか,COVID-19を重篤化させるのではないか,COVID-19流行下ではRAS阻害薬を中止すべきでは,などの懸念が沸き上がっている。その一方で,RAS阻害薬がCOVID-19の肺障害を改善させる可能性も指摘されている。本稿ではCOVID-19とACE2に関する情報を整理し,ACE2に注目した現在開発中のCOVID-19治療法を紹介するとともに,ACE阻害薬とARBは継続すべきであることを強調したい。
「KEY WORDS」高血圧,新型コロナウイルス,レニン・アンジオテンシン系阻害薬,アンジオテンシン変換酵素2,肺炎
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。