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特別企画 特集 緊急“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策”

栄養不足と免疫低下 -JSPEN12の提言より-

東口髙志

アンチ・エイジング医学 Vol.16 No.3, 22-26, 2020

2020年,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,世界中の多くの人々を不安の渦に巻き込んだ。画期的な治療薬やワクチンをはじめとする予防的な治療法の開発に至っておらず,手をこまねいてみているうちに多くの患者が罹患し,苦しい症状に耐え,そして尊い命が失われていった。このCOVID-19は,急激に重篤な呼吸器障害を併発し,長期の集中治療室(ICU)での治療が必要となる。そして,特に高齢者や複数疾患を有する患者では死亡率が高いことが指摘されている1)-5)。このようなハイリスクな症例では多くの場合,背景として低栄養ならびに骨格筋の減少・機能低下(サルコペニア)の存在があり6)7),それがICUでの治療を長引かせ,時には残念な結果を招くことにつながる。一方,生体の免疫力は栄養状態によって支えられており,低栄養で特に筋肉量が減少したものでは,明らかに感染症に対する免疫能が低下していることが知られている6)8)。すなわち,栄養状態を良好に保つことはCOVID-19ウイルスから身を守る大きな一助となるものと考えられる。会員数22,000名を超える世界最大の栄養関連学会である一般社団法人日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)は,急遽“COVID-19対策プロジェクトチーム(P 009)”を立ち上げ,世界の新しい情報をもとに“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言:JSPEN12の提言(https://www.jspen.or.jp/covid-19/)”を発表した。本稿では,このJSPENの提言に基づき,COVID-19に対する栄養療法を通して栄養不足と免疫低下について概説する。
「KEY WORDS」新型コロナウイルス感染症(COVID-19),分岐鎖アミノ酸(BCAA),ビタミンD,栄養サポートチーム(NST),社会栄養学

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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