腸内細菌叢を中心に形成される腸内環境が,ヒトの健康状態や種々の疾病とかかわりをもつことが明らかにされつつあり,ビフィズス菌や乳酸菌をはじめとしたプロバイオティクス(probiotics)が腸内環境調整作用を期待して用いられている。抗加齢医学の観点からみても,これらのプロバイオティクスが年齢に関連した腸内細菌叢の変化を調整・是正し,病原微生物からの保護作用を発揮し,腸管バリア機能を増強させ,腸管粘膜免疫機構を制御し,腸管蠕動を調整することなどの生体調整機能を介して,腸管炎症病態を改善することが明らかになっている1)。さらに,これらの生体調整機能を介して健康維持を寄与することにより,健康寿命の延伸に繋がることが期待される。実際に,いくつかの乳酸菌についてはマウスや線虫を用いた基礎的検討において,寿命の延伸などの抗加齢効果が見出されている2)-4)。本稿では,これらのプロバイオティクスのうち,乳酸菌に焦点を当てていきたい。
乳酸菌は糖を代謝して乳酸を生成する通性嫌気性菌の総称であり,乳発酵食品(ヨーグルト,チーズ,漬物など)や植物,ヒト・動物の腸,さらには,海洋環境など,地上の多様な場所に生育している。「植物性乳酸菌」は,植物から分離され植物質を発酵して生育する乳酸菌で,分離源などを根拠にして「動物性乳酸菌」と区別される用語として用いられている。しかしながら,チーズやヨーグルトを発酵させる動物性乳酸菌も植物質を発酵して生育しているものもあり,また,植物・動物から共通して分離される乳酸菌もある。この区別は分離源からみたものであることを理解する必要がある。
これまでに我々は,京都の伝統的な漬物である「すぐき」から分離されたLactobacillus brevis(以下,L. brevis)KB290に関して,マウス腸炎モデルを用いた腸管炎症抑制効果や,ヒト介入試験において下痢型過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)様症状の改善作用を明らかにしてきた5)-7)。本稿ではこれらの研究成果を中心に,植物性発酵食品由来の乳酸菌であるL. brevis KB290のプロバイオティクスの可能性について紹介したい。
「KEY WORDS」植物性乳酸菌,Lactobacillus brevis (L. brevis) KB290,過敏性腸症候群,CD11c⁺マクロファージ,CD103⁻樹状細胞
乳酸菌は糖を代謝して乳酸を生成する通性嫌気性菌の総称であり,乳発酵食品(ヨーグルト,チーズ,漬物など)や植物,ヒト・動物の腸,さらには,海洋環境など,地上の多様な場所に生育している。「植物性乳酸菌」は,植物から分離され植物質を発酵して生育する乳酸菌で,分離源などを根拠にして「動物性乳酸菌」と区別される用語として用いられている。しかしながら,チーズやヨーグルトを発酵させる動物性乳酸菌も植物質を発酵して生育しているものもあり,また,植物・動物から共通して分離される乳酸菌もある。この区別は分離源からみたものであることを理解する必要がある。
これまでに我々は,京都の伝統的な漬物である「すぐき」から分離されたLactobacillus brevis(以下,L. brevis)KB290に関して,マウス腸炎モデルを用いた腸管炎症抑制効果や,ヒト介入試験において下痢型過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)様症状の改善作用を明らかにしてきた5)-7)。本稿ではこれらの研究成果を中心に,植物性発酵食品由来の乳酸菌であるL. brevis KB290のプロバイオティクスの可能性について紹介したい。
「KEY WORDS」植物性乳酸菌,Lactobacillus brevis (L. brevis) KB290,過敏性腸症候群,CD11c⁺マクロファージ,CD103⁻樹状細胞