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特集 老化と炎症

慢性炎症とサルコペニア

門松毅

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.3, 42-47, 2019

サルコペニアは,加齢や種々の疾患により骨格筋の量が減少し,それに伴い筋力や身体機能が低下する状態である。European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)では,進行性および全身性の筋量,筋力の低下を特徴とし,身体的障害や生活の質(quality of life:QOL)の低下,死亡などのリスクを伴う老年症候群として定義されている1)。サルコペニアは,糖尿病,心血管疾患,がんなどの慢性疾患を有する患者の死亡率を上昇させる。超高齢社会を迎えたわが国のみならず世界的に高齢者人口が増加し,サルコペニアの発症数も急増していることから,その対策が急がれる。しかし,サルコペニア発症の分子機構はまだ十分には解明されておらず,その分子機構解明に基づく有効な予防や治療法の開発が重要な課題となっている。
アンジオポエチン様因子(angio-poietin-like protein:ANGPTL)は,血管新生や幹細胞の維持に関わるアンジオポエチンと類似の構造的特徴を有する分泌タンパク質である。しかし,アンジオポエチンの特異的受容体であるTie2や,そのファミリーメンバーであるTie1には結合できない。現在までに8種類のANGPTLファミリー分子が同定され,生物学的機能としてはその多くが血管新生制御に関わるだけでなく,糖・脂質代謝やエネルギー代謝に関与するなど,多様な機能を有することが明らかとなっている。これまでの我々の研究成果より,ANGPTL2は血管新生制御因子であること,組織損傷の修復やリモデリングに関与すること,その機能過剰により慢性炎症を引き起こし,種々の加齢関連疾患の発症・進展に関連することを明らかにした2)3)。本稿では,慢性炎症とサルコペニア発症について概説するとともに,最近,我々が明らかにしたANGPTL2を介した慢性炎症とサルコペニア発症および,その予防法としての運動の意義についても紹介する。
「KEY WORDS」サルコペニア,慢性炎症,アンジオポエチン様因子2(ANGPTL2),加齢,運動

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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