特集 漢方とアンチエイジング
六君子湯の作用─グレリンを含めて
アンチ・エイジング医学 Vol.13 No.6, 46-51, 2017
高齢者における栄養不良は,疾患の治療や予後に大きな影響を及ぼすが,その最大の原因が食欲不振であり,食欲を標的とすることがサルコペニアやフレイルの予防や治療において重要となる1)。これまでのところ,一般の西洋薬のなかで,この病態に有効であることが確認されている薬剤はないが,漢方薬では補剤を中心として高齢者の食欲不振に有効であるとされている方剤があり,代表的なものとして六君子湯,補中益気湯,十全大補湯,人参養栄湯などがあげられる2)。なかでも六君子湯は,摂食ホルモンであるグレリンを増加させ,その作用を増強することが近年明らかにされてきた3)。
ごく最近,我々のグループは,六君子湯が老化マウスの生存期間を有意に延長すること,その効果はグレリン受容体を介したサーチュイン1(Sirtuin1:Sirt1)活性化が重要な役割を果たしていることを明らかにした4)5)。本稿では,六君子湯の薬理効果と,アンチエイジング薬としての六君子湯の可能性について述べる。
「KEY WORDS」六君子湯,食欲,グレリン,寿命延長,Sirt1
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