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特集 漢方とアンチエイジング

血管老化に対する漢方治療

赤澤純代藤本由貴澤田未央守屋純二上西博之小林淳二

アンチ・エイジング医学 Vol.13 No.6, 25-31, 2017

心疾患・脳血管障害の基礎病変としても動脈硬化は重要であり,加齢とともに進行して大多数の人に認められる病態でもある。また,その進行は個人差が大きく,遺伝素因と環境要因である食・運動・睡眠・思考・ストレスなどの生活習慣など,多様な因子が関与している。漢方の考え方の「瘀血」という状態と微小循環の悪化の仕方などをみてみると,現代のさまざまな疾病が「瘀血」の病態の悪化と関係があることがわかってきた。漢方薬は,複数の生薬から構成される多成分系の複合薬物であり,動脈硬化のような複合因子が関与して長期的に形成される病態に対し,有効性が期待される薬物である。
本稿では,女性総合外来を通して,微小循環の改善がさまざまな症状の改善をしてきた経験より,瘀血の病態改善,すなわち毛細血管レベルの血流の改善が重要であることについて解説する。毛細血管の構造の安定化には血管内皮細胞のTie2活性化が重要であり,アンジオポエチン1(Ang1)に替わる活性のあるものが漢方の成分に含まれており,血管構造の維持に効果を示したことについて紹介したい。
これまでの研究は大血管に対する内容が多く,再現性をもって評価する方法が図2に示すような評価方法であったため,大きなサイズの血管に対するものが多かった。しかしながら,全身の血管を考えると,実は血管の95~99%が毛細血管であり,マクロファージなどは細静脈動脈レベルの太さなどで関与していることが考えられる。今回は,漢方的な視診の一つ,舌診の「瘀血」所見・歯茎・口唇の色と毛細血管床の観察を比べてみた。
「KEY WORDS」毛細血管,血管内皮壁細胞,瘀血,桂皮(Ang1に替わる植物エキス),Tie2,CAS system(指先毛細血管床観察測定数値化システム)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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