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特集 エピジェネティクスとアンチエイジング

腎疾患とエピジェネティクス

林香伊藤裕

アンチ・エイジング医学 Vol.12 No.6, 36-41, 2016

「エピジェネティクス」とは,DNAの塩基配列情報のみでは説明のつかない遺伝子機能に関わる遺伝子修飾を指し,エピジェネティックな機序による遺伝子発現調節は,発生段階での重要なシグナルとして,あるいは外部環境の変化を記憶する手段として,生命現象において必要不可欠なものである。エピジェネティックな遺伝子修飾異常は,癌の発症・進展における一つの重要な原因として指摘されてきたが,近年になり肥満や高血圧,糖尿病などの生活習慣病においてもその関わりが認識されはじめている。さらに,これらの後天的な環境による遺伝子修飾異常が子孫に受け継がれる可能性も示唆されている。日本においても加速する高齢化社会を背景として,糖尿病性腎症をはじめとする腎疾患は増加傾向にあり,腎疾患の病態におけるエピジェネティックな機序の関与が注目されている。本稿では,腎疾患およびレニン・アンジオテンシン系(RAS)とエピジェネティクスの関連について最近の知見をまとめた。
「KEY WORDS」腎臓,高血圧,ポドサイト,エピゲノム調節,メモリー効果

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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