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特集 アトピー性皮膚炎の今

特集にあたって

古江増隆

皮膚アレルギーフロンティア Vol.10 No.3, 5-5, 2012

アトピー素因とは, (1)家族歴・既往歴(気管支喘息, アレルギー性鼻炎・結膜炎, アトピー性皮膚炎〔atopic dermatitis; AD〕), または(2)IgE抗体を産生しやすい素因と定義される. アトピー素因の概念は, CocaとCookeによって1923年に提唱された. 類まれなる臨床家・研究家であったこの2人の提言は, 最近のgenome-wide association study(GWAS)によって裏づけられつつある. フィラグリンなどの皮膚バリア機能分子遺伝子群のみならず, IgE免疫調整に関連する遺伝子群, IL-1やIL-18に関連する遺伝子群のADへの関与が, 欧州, 日本, 中国, その他の国々のGWASで相次いで証明されたからである. ADの病態に皮膚のバリア機能異常と免疫調節異常がともに関与するという遺伝学的なGWASによる立証は, 疾患関連遺伝子が産生するそれぞれの蛋白群の機能低下あるいは機能亢進がどのように連鎖し, 波及し, アトピー性炎症を樹立させるのかという病態解明の謎解きに, 少なくとも主役となる蛋白群を浮き彫りにしてくれたという点において大きく貢献した. ADで認められる非常に強いかゆみが, アトピー素因を司る蛋白群とどのような関連性をもつのか今のところまったくわかっていない. しかし, かゆみの研究は本症の治療の根幹にあるといっても過言ではない. かゆみ関連蛋白としてIL-31, セマフォリン3A, gastrin-releasing peptideが最近大きな注目を集めている. 本症の病態解明に向けての研究は急速に進んでいる. そのすべての側面を網羅できればそれに勝ることはない. しかし一方で, 100%の確証をもった病態基盤が確立されているわけでもない. 本号の特集では, ADにおける最近の話題がそれぞれのエキスパートによってわかりやすく解説されている. ご多忙にもかかわらず, 本企画に貴重なお時間を割いていただいた執筆者の皆様に厚く御礼を申し上げたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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