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 関節リウマチ(RA)の薬物治療において,メトトレキサート(MTX)は中心的な役割を担っている.第一選択薬として単独での治療に用いられる以外に,併用療法においても重要な併用薬剤となっている.いずれにしてもMTXを開始する際には漫然と使用することなく,副作用に注意しながら早期に治療効果が得られる十分な量まで増量することが基本になる.副作用に関しては,それが生じたとしてもしっかりと対応できる治療環境を整えることが最重要で,さらに副作用に対する注意がかなり必要な背景の方には,増量のタイミングと増量幅を調整することになる.


 日本リウマチ学会による「メトトレキサート診療ガイドライン」では,推奨としてMTX治療開始後,4~8週間経過しても効果が不十分であれば増量するとなっている.忍容性に問題なければ増量し,効果が不十分であれば,16mg/週まで漸増することにより,RAに対する有効性は用量依存性に向上すると指摘している.

 その解説および根拠として,ガイドラインでは,海外の勧告では投与量増量の判断をする時期として,投与開始後2~4週間後1)あるいは6週間後2)と定めているが,MTX投与開始4週間後の有効率は20~30%(最終有効率の約50%)と報告されており,とくに低用量ではMTXの効果を判定するのには2週間は短期間と考えられること,一方,最近の低分子抗リウマチ薬(DMARDs)によるタイトコントロール戦略の有効性に関する報告では,4週ごとにRA疾患活動性を評価し治療を強化した症例では,3ヵ月ごとに評価した症例に比べて,寛解率が高く,関節破壊も進行しなかったことを挙げ3),MTX治療開始後あるいは増量後は4~8週ごとにRA疾患活動性を評価し,効果が不十分であれば投与量を再考することを勧めている.実際には治療当初は2~4週ごとに2~4mgの増量幅で増量し,早期にまず0.2~0.3mg/kg/週までの増量を目指す場合もあり,また,高齢者など副作用の合併には格別な注意が必要な場合には,上記のガイドラインにある標準的な増量のタイミングより遅くすることもある.

 MTXの治療効果発現までには1~2ヵ月を必要とすることが多いが,それを確認しながら増量のタイミングを図ると,実際にMTXの治療効果を得るまで半年を超えてしまうことが懸念される.これまでの臨床研究からも,半年までの病勢コントロールがそれ以降の活動性と相関していることが示されており4),MTXの効果発現と用量は関連があるので,できるだけ3~6ヵ月のあいだにMTXの有効性が判定できるような状況にもち込むことが望ましい.


●References

1)Smolen, J. S., Landewé, R., Breedveld, F. C. et al. : EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs. Ann. Rheum. Dis. 69 : 964-975, 2010

2)Visser, K., Katchamart, W., Loza, E. et al. : Multinational evidence-based recommendations for the use of methotrexate in rheumatic disorders with a focus on rheumatoid arthritis : integrating systematic literature research and expert opinion of a broad international panel of rheumatologists in the 3E Initiative. Ann. Rheum . Dis. 68 : 1086-1093,2009

3)Grigor, C., Capell, H., Stirling, A. et al. : Effect of a treatment strategy of tight control for rheumatoid arthritis (the TICORA study) : a single-blind randomised controlled trial. Lancet 364 : 263-269, 2004

4)Aletaha, D., Funovits, J., Keystone, E. C., Smolen, J.S. : Disease activity early in the course of treatment predicts response to therapy after one year in rheumatoid arthritis patients. Arthritis Rheum. 56 : 3226-3235, 2007


東京大学大学院医学系研究科

内科学専攻アレルギーリウマチ学講師

川畑仁人 Kawahata Kimito