米国整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons;AAOS)の2012 Annual Meetingが2012年2月7日~11日までの5日間,米国のカリフォルニア州サンフランシスコで開催されました.
サンフランシスコは米国の西海岸に位置する都市で,現在の人口は約78万人,幕末に咸臨丸が寄港した都市として知られ,日本にゆかりの深い都市です.今年は日本がゲストネーションということもあり,日本からも多数の先生方が参加されていました.会場となったMoscone Convention Centerはサンフランシスコの中心部に近く,ホテルからシャトルバスも出ていましたが,ホテルからの移動はおもに徒歩にて行いました.ホテルがケーブルカーの走る通り沿いにあったため,AAOS Meeting より前に行われた米国整形外科基礎学会(ORS)から連続して滞在している先生方は,ケーブルカーのWeekly Passを購入していました.
AAOSのAnnual Meetingは毎年米国で開催されています.今年の学会には3万人以上が参加して,演題は34のシンポジウムのほか,口演が814題,ポスターが578題で,整形外科の多岐の分野にわたる報告が行われました.筆者が所属する名古屋大学整形外科からは8演題の発表を行いました.筆者の発表はTumor/Metabolic Disease:Basic Science/Biologyのセッションで「Therapeutic Potential of Hyaluronan Oligosaccharides for Bone Metastasis of Breast Cancer」というタイトルで,乳癌のセルラインによるVitroの実験と,乳癌のマウス骨転移モデルによるVivoの実験による超低分子ヒアルロン酸オリゴ糖の乳癌骨転移に対する抗腫瘍効果について報告しました.全体的にどのセッションでも会場は満席に近く,非常に活発な討論が行われていました.
日本がゲストネーションであったため,会場のロビーには日本のブースが設置され,日本を紹介するビデオが上映され,また,ホテルの各部屋のテレビでも日本整形外科学会の歴史に関するビデオが上映されていました.ポスター会場ではゲストネーションのspecial educational posterとして日本から10演題が展示されました.
学会の最終日はSpecialty Dayであり,各専門分野の学会による教育プログラムが行われました.筆者は骨軟部腫瘍を専門としているため,Musculoskeletal Tumor Societyの会場に参加しました.会場は骨軟部腫瘍領域の著名な海外および日本国内の先生方が一同に会しており,骨軟部肉腫における診断の遅れが予後に影響するのかなど,非常に白熱した議論が行われていました.
観光も学会の楽しみですが,今回は学会前日の朝にサンフランシスコ国際空港に到着したため,時差解消のため同行した先生方とフィッシャーマンズワーフまで歩いていきました.レンタサイクルでゴールデンゲートブリッジを渡り,対岸のサウサリートの町まで行きました.橋周辺の急な坂には閉口しましたが,気候もよく平坦な道を自転車で風を切って疾走するのは爽快でした.学会の4日目には“AAOS 5K sunrise run”に参加しました.文字通り3.1マイル(5㎞)を走るもので,外国人,日本人を含め,老若男女を問わず参加しており非常に盛況でした.
AAOS Meetingのよいところは,論文を連続して発表しているような世界の先生方の意見を直接拝聴でき,学問的な世界の流れや状況を確認できるところです.次回の2013 Annual Meetingは2013年3月19日~23日に米国のシカゴで開催される予定です.本学会は採択率も低く,良いテーマでないと発表者として参加するのが難しいところがありますが,今後とも積極的にチャレンジする価値があると思う学会でした.
名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学講座整形外科
浦川 浩 Urakawa Hiroshi