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Orthopractice―私の治療法 進行期変形性股関節症に対する手術法

DEBATE 2 寛骨臼移動術の適応と限界

中島康晴岩本幸英

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.10 No.2, 20-26, 2012

 進行期股関節症への関節温存術は前・初期股関節に比較してその術後成績が劣るため,適応を十分に吟味する必要がある.進行期股関節症例に対して行った寛骨臼移動術の術後成績を検討し,その適応として,①40歳以下,②肥満がなく,③進行前期までの症例,そして関節形態は④外転位で適合性が向上し,⑤atrophic OAでないことの5点を挙げたい.股関節外科医は,進行期を一括りにして,安易にTHAばかりを適応すべきではない.とくに若年者に対しては関節温存の可能性を探るべきである.

緒 言

 寛骨臼移動術(transposition osteotomy of the acetabulum;TOA)は外側アプローチによるperiacetabular osteotomy(PAO)の1つであり,臼蓋形成不全股に対して寛骨臼を球状に掘り出して回転移動することにより骨頭の被覆を改善し,関節症の進行を防止しようとする手術法である1)(図1).

その特徴は,大転子を切骨反転して骨切り部を大きく展開すること,および骨切り部への大きな骨移植による骨頭の引き下げをしないことである2)3).
 PAOはおもに前・初期変形性股関節症(股関節症)を適応としており,関節軟骨を一部消失した進行期股関節症の術後成績は劣らざるを得ない.当然ながら人工股関節置換術(total hip arthroplasty;THA)の成績に比較し得るものではない.ここでは進行期股関節症の術後成績を再検討し,本病期に対する本術式の有用性を考察してみたい3)4).

1 適応

 他のPAOと同様,その適応は股関節症のうち明らかな臼蓋形成不全を伴い,病期が比較的早期である症例が望ましい.強い骨頭変形がなく,外転位X線像で関節適合性が良好なものが良い適応となる.年齢は50歳代までを目安としている.
 対象となる病期は前および初期股関節症であり,進行期では若年例で骨頭変形が少なく,外転位で関節裂隙が開大して適合性が改善する例に限って適応となる.ペルテス病様変化後の扁平股や三角形の骨頭などの骨頭変形例では,外転位で適合性がかえって悪化する症例が存在する.そのような場合,外反骨切り併用により良好な適合性を保つことが可能であれば本法の適応となる.

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