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米国リウマチ学会(ACR)

第74回米国リウマチ学会(ACR)

伊藤聡

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.2, 48-49, 2011

 2010 Annual scientific meetingは,2010年11月6~11日まで,ジョージア州アトランタ,ジョージアワールドコングレスセンターにおいて開催された.オープニングセレモニーがジョージア水族館で行われ,多数のリウマトロジストが参加した.水族館めぐりは筆者の趣味のひとつであり,日本各地(ツーリング先でも),世界各国,訪れた先に水族館があれば必ず入館しているので,今回は学会参加と趣味が同時に実現し,大変幸せであった.ジンベエザメをはじめ,展示されている魚の種類も“水族館評論家”をおおいにうならせる内容であり,ビッグバンドによるジャズ演奏も大変素晴らしかった.

 学会では,生物学的製剤が使用され始めてかなりの年月となり,“これはすごいぞ”というセンセーショナルな発表は少なくなり,代わりに,どの製剤をどのように使用したらよいか,あるいは効果が減弱したときに次の薬剤をどのように選択するか,という実地臨床に役立つ演題が多かったように感じられた.インフリキシマブに関しては,Leiden大学のDriven LらによるBeStスタディの7年間の解析で,インフリキシマブを初期から開始し,ドラッグフリーになっている症例が,7年を過ぎても良好な経過を示し,7年の継続率は56%に達しており興味がもたれた.また,Texas大学のRoy Mらは,エタネルセプトやアダリムマブからインフリキシマブにスイッチして有効であったと発表しており,インフリキシマブを十分量で使用する効果が確認された.インフリキシマブが無効という報告は,増量が認められていない,あるいは普及していないEU以外の欧州諸国からの報告が多く,わが国でも2009年7月に投与短縮・増量が認められたことから,その効果を確認する必要性が感じられた.
 ドラッグフリーに関しては,筆者はインフリキシマブ同様,抗体製剤のアダリムマブで実現が可能ではないかとかねてから思っていたのだが,わが国でも最近研究会レベルで少数例の報告が散見され始めている.ハンブルグのHoehle Rheumatologie PracticeのHoehle Mらは,活動性の高い関節リウマチ(RA)患者,乾癬性関節炎患者にアダリムマブを使用し,臨床経過とMRI所見,さらにパワードップラーエコー所見を解析した.発症早期の患者では,アダリムマブとメトトレキサートを使用し,臨床的,画像的寛解に導入することが可能であり,さらにアダリムマブを中止してもその後5年間再燃を認めなかった.「今後の研究として,さらに多くの症例を追跡するために小型MRIがよいのではないか」と話をしたところ,「Low teslaのものはだめだ」と言うので,「筆者が筑波大学で開発に関与したCompact MRI(CompacTscan)はいいぞ」と宣伝をして別れた.TNF阻害薬中止が可能である,あるいは中止しても骨破壊は進行しないという報告がいくつかあるなかで,デンマークのグループは,DANBIOスタディの結果として,TNF阻害薬中止群は継続群よりもX線上の骨進行が認められることを報告しており,注目された.
 ACR clinical symposiumでは,Stone JH,Jayne Dらが参加した,ANCA関連血管炎のセッションが興味深かった(筆者は厚生労働省の血管炎研究班の班員である).RAとは異なり,TNF阻害薬が無効であることが再確認され,induction therapyのシクロホスファミドをいかに少量で短期間にすませるかに各国のリウマトロジストが興味を示していることが再確認できた.また,リツキシマブはシクロホスファミドと同等,もしくはやや優位であるという2つの研究が紹介された.わが国ではリツキシマブは血管炎に使用される可能性は今のところなく,またもや海外とわが国の治療に隔たりができるのかと感じる一方,海外の事情を熟知しつつわが国で医療を行う重要性が再認識され,国際学会に出る喜びを再び感じたのである.さらに,毎年のことであるが,米国,ドイツの友人とそれぞれ食事をする機会があり,学会で得られる以上の裏情報?を入手することができてますます幸せであった.さらにまた,会場近くにはCNNセンターがあり,見学ツアーに参加(写真),その後売店で2002年にエジプトのシャルムイッシェーフ(ジャック・クストーが世界で一番美しい海と絶賛した紅海沿いの町)での学会で知り合った,もう一生会うことはないだろうと思っていたリビアのリウマチトロジストに会い,お互い大感激であった.彼には高級リゾートホテルのプールでバタフライの泳ぎ方を教えたが,“今でもお前のおかげでバタフライができる”と感謝され嬉しかった.
 本当に国際学会はやみつきになる.昨年フィラデルフィアでは,RAの新しい診断基準発表の現場に参加することができたが,今回は国内での仕事の関係で最終日は参加ができず,新しい寛解基準の発表の現場に立ち会えなかったのは残念であった.

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