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Arthritis Topics

関節リウマチにおけるTreat to Target

竹内勤山中寿田中良哉針谷正祥

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.1, 74-79, 2011

1 T2T Inisiativeの背景と日本における展開
1.T2T Initiativeの背景
 Treat to Target(T2T),すなわち「目標達成に向けた治療」とは,日常診療において治療目標を明確にし,戦略的に治療アプローチを展開していくという概念である.現在,糖尿病や高血圧などの疾患領域ではHbA1c値や血圧値といった治療目標値がガイドラインなどにより設定され,日常診療においてT2Tが実践されている.また,T2Tに基づいたタイトコントロールにより長期アウトカムが改善することもすでに明らかになっている1)2).

1 T2T Inisiativeの背景と日本における展開(続き)

1.T2T Initiativeの背景(続き)

 関節リウマチ(RA)においては,近年パラダイムシフトというべき治療法のめざましい進歩により最適な治療戦略への理解が深まったものの,日常診療では,治療目標と治療戦略に大きなバラツキがあることが指摘されていた.そこで,RAのアウトカム改善のためには治療目標を明確にし,目標達成に向けてタイトコントロールしていく治療戦略を標準的なRA治療に組み入れるべきであるという提言がなされるようになった.
 さらに,RAではほかの慢性疾患と同様,疾患コントロールが不良の場合には関節破壊進行および身体機能障害などのアウトカム悪化がもたらされる3)-6)が,多くの文献では目標達成に向けたタイトコントロールにより,長期アウトカムが改善することも報告されていたことから7)-9),日常診療において広く受け入れられ,適用可能な治療目標を設定することが課題とされていた.
 そこで治療目標を定義し,RAにおけるT2Tの実現に取り組むべく生まれたのが“T2T Initiative”である.

2.T2Tリコメンデーション策定の経緯
 T2T Initiativeの活動は,2008年,オーストリアのProf. Josef Smolenを中心とした欧州と北米のリウマチ専門医と患者から構成される20名あまりのSteering Committeeの発足からスタートした.T2T Steering CommitteeはEULARによる調査とT2Tに関する文献のシステマティックレビュー10)をもとに,標準化されたEULARの手法11)に従って暫定的なリコメンデーション案を作成した.その後,世界各地域から患者代表を含むリウマチ専門家を追加した60名以上からなるT2Tコンセンサスグループによる討論・修正が行われた.さらに,新たなリコメンデーション案が全員に提示され,デルファイ変法による投票と修正が重ねられ,T2Tリコメンデーションの最終版が決定した.T2Tリコメンデーションの各ステートメントにはエビデンスレベルと推奨度が決められ12),さらに各ステートメントの最終版に対する同意レベルが投票により得られている.
 その後,T2Tコンセンサスグループの参加者が世界各地域にT2Tリコメンデーションを持ち帰り,各国語に翻訳したうえで普及活動を展開している.わが国においては,2009年末にT2T Japan Steering Committee(図1)が発足し,協議を重ねてT2Tリコメンデーションの日本語版を策定した.

2 T2Tリコメンデーションを深く理解する

 T2Tリコメンデーションは,4項目のOverarching Principles(基本的な考え方)と,エビデンスと専門家の意見に基づく10項目のステートメントからなるリコメンデーションで構成される(表1).

“基本的な考え方”には,RAの治療側面として,個々のステートメントの項目に含める必要はないが,前置きしなければならないことが採り上げられた.10項目のステートメントからなるリコメンデーションでは,診断,フォローアップ,治療に関連する個々のステートメントが示された.以下では,各ステートメントについて,より深い解説を行う.

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