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座談会(Round Table Discussion)

小児アレルギー疾患の最近の話題

岡本美孝徳山研一吉原重美

鼻アレルギーフロンティア Vol.11 No.2, 9-17, 2011

小児気道アレルギーの現状
岡本 アレルギー疾患は,小児だけでなく成人でも増えているといわれていますが,アレルギーの根本対策を考える上で,小児のアレルギー疾患は非常に重要な位置付けにあると考えられます.また,アレルギー疾患治療を考える上でも,小児期は治療の早期介入のターゲットとして大いに注目されています.

出席者
千葉大学大学院医学研究院
耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授
岡本 美孝 〈司会〉(写真中央)

埼玉医科大学小児科/アレルギーセンター 教授
徳山 研一(写真左)

獨協医科大学医学部小児科学 准教授
吉原 重美(写真右)

小児気道アレルギーの現状(続き)

岡本 それでは,まずは喘息についてお伺いしていきたいと思います.海外の文献などでは,喘息患者数は頭打ちになっているのではないかと報告している国もありますが,いかがでしょうか.
吉原 ISAAC(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)による世界的な調査では,1993~1994年と2002~2003年は喘息患者が増えていますが,2010年はデータがないため,統計学的に増えているかどうかは断定できません.しかし,喘息患者は増加していると思われます.
岡本 日本国内における喘息患者については,どのような傾向がみられますか.
徳山 日本では,喘息患者の発症年齢に大きな変化はありませんが,治りにくくなっているため,患者数は増えているといわれています.しかし,治療法は進歩しているので,QOLはかなり向上しています.一方,合併症としてのアレルギー性鼻炎の発症は低年齢化しています.スギ花粉症などは以前は小学校入学後に発症することが多かったのですが,最近では幼児期に発症することも決してまれではありません.“one airway, one disease”の概念が注目されていますが,喘息とアレルギー性鼻炎を合併している小児が増加傾向にあるという印象を受けています.
岡本 喘息の有病率も増えているのでしょうか.
吉原 有症率は上昇しており,低年齢での発症率も増えています.
岡本 それは,喘息の診断基準が変わったことも関係していますか.
吉原 小児喘息の約6割が2歳までに発症するといわれています.『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005』から,乳児喘息の診断基準を「気道感染の有無にかかわらず,明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上繰り返した場合」としており,また「エピソードとエピソードの間に無症状な期間が1週間程度以上あること」と示しています.そのため,ウイルス誘発性の喘鳴でも3回あれば広義の乳児喘息と診断されます.今までのアトピー型喘息は狭義の乳児喘息と定義しているため,以前とは概念が変わっており,一概に比較はできませんが,全体的には喘息患児は増えています.
徳山 乳児喘息の診断は非常に難しいため,とりあえず喘息と診断して,治療の早期介入をしていくという考えから広義の喘息と診断しています.
吉原 2008年に『Allergy』に発表された欧米の小児気管支喘息スペシャリスト44人が作成したPRACTALL consensus reportには,5歳未満は気管支喘息のフェノタイプとしてウイルス誘発型喘息とアトピー型喘息を分けて考えるとしており,最近の世界的な傾向となっています.一方,ヨーロッパ呼吸器学会の診断基準では,5歳未満の場合には喘息という診断はつけずに,multiple-trigger associated wheezeを喘息とし,viral associated wheezeはviral associated wheezeのままとしています.治療や状態は同じでも診断名の付け方が国や学会によって異なるため,5歳未満は非常に難しいです.
岡本 アトピー型の患児がウイルスに感染することもあり,ウイルス誘発性喘息といってもクリアに区別することは難しいですね.私が学生の頃は,小児喘息は大体治るものだと教わりました.しかし最近は,半数ほどしか寛解していないのではないかという報告もあるように聞いています.
徳山 以前は,無症状の時期があるから治った,アウトグローしたといわれていただけなのです.病態生理の上からは,アウトグローと呼ばれる状態にはいくつかの亜型があると思われます.われわれは,無投薬で無発作状態の持続している思春期喘息児の呼吸機能を,β2刺激薬吸入前後のフローボリューム曲線を測定することにより検討しました.その結果,半数以上の症例で末梢気道が可逆的閉塞を示していることが判明しています.
岡本 すると,以前に比べて喘息が治りにくくなったわけではなく,昔はあまり長期の経過を追っていなかったため気付くことができなかったとも考えられますね.
徳山 以前にはなかった気道リモデリングという考え方も出てきましたし,喘息は簡単には寛解にいたらない疾患である可能性があります.
吉原 日本小児アレルギー学会では,5年以上無治療で無症状が続けば臨床的治癒であると判定していましたが,肺機能や気道過敏性の回復まで含めた機能的治癒を考えると,それほどアウトグローしていないため,小児科の今後の課題とされています.

小児気道アレルギーの治療

岡本 小児気道アレルギー治療の進歩というと,やはり吸入ステロイド薬の普及があげられるのでしょうか.
徳山 吸入ステロイド薬は画期的な治療薬だと思います.最近では,早期介入におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の効果にも注目が集まっています.
吉原 広義に喘息ととらえることにより,治療が早期に行われ,難治化や重症化する学童期以降の喘息患者は減っています.アウトグローしているかどうかは明らかになっていませんが,5歳未満を積極的に診断して吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬で治療することによって,難治化する喘息は明らかに減少しています.

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