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統合失調症様症状をきたす脳神経疾患

全身性エリテマトーデス(NPSLE)などの膠原病

Neuropsychiatric disorders in systemic lupus erythematosus and other rheumatic diseases

西村勝治

Schizophrenia Frontier Vol.12 No.1, 32-37, 2011

要約
 統合失調症様症状をはじめとする精神症状を呈する膠原病および膠原病類縁疾患のうち,特に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)について概説した。SLEによる神経精神障害(neuropsychiatric SLE;NPSLE)はSLEの約半数に出現し,QOLの低下,他の臓器障害の増加,予後不良と関連している。NPSLEの発症には多因子的なメカニズムが想定されており,微細な血管障害(vasculopathy),神経細胞に対するさまざまな自己抗体の産生,サイトカインの産生などが関与していると考えられている。近年,中枢神経内への自己抗体の侵入を促進する血液脳関門(blood-brain barrier;BBB)のユニークな役割が注目されている。

Key words
全身性エリテマトーデス,神経精神ループス,抗リン脂質抗体,抗NMDA受容体サブユニットNR2抗体

はじめに

 膠原病および膠原病類縁疾患では経過中に多彩な神経精神症状がみられる。特に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE),Behçet病,血管炎症候群[特に抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)関連血管炎],Sjögren症候群などにおいて出現し,統合失調症様症状を呈することも少なくない。
 このなかでSLEの神経精神障害は臨床的に頻度が高く,重要視されてきた。中枢神経ループス(CNS lupus)あるいはCNS-SLEと呼ばれたが,最近では末梢神経障害も含めた概念として神経精神ループス(neuropsychiatric lupus)あるいはNPSLEと総称されている1)。ループス腎炎と並んでSLE難治性病態の1つであり,予後不良,QOLの低下,他の臓器障害の増加と関連している2)。本稿ではNPSLEに焦点を当て,特に疫学,病態発生についての最近の知見を中心に概説する。

1 NPSLEの分類と疫学

 1999年に米国リウマチ学会(American College of Rheumatology;ACR)の合議により,末梢神経症状を含めてNPSLEの分類,定義が行われ,このうち精神症状はDSM-Ⅳに準拠して,①急性錯乱状態(acute confusional state),②認知機能障害(cognitive dysfunction),③精神病性障害(psychosis),④気分障害(mood disorder),⑤不安障害(anxiety disorder)に分類されている(以下,ACR分類)。もちろん①はせん妄に相当する。表1にNPSLEのACR分類と,同分類を用いた17の疫学研究のメタ解析3)によるNPSLEの出現頻度を示す。

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