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患者まで届いている再生医療

治療抵抗性重症虚血肢患者に対する自家骨髄単核球細胞移植による血管再生治療

川俣博史矢西賢次堀友亮藤岡歩庄司圭佑的場聖明

再生医療 Vol.19 No.4, 37-44, 2020

末梢動脈疾患(peripheral arterial disease;PAD)は,動脈内腔が狭窄し慢性的に四肢への血流が減少することで,冷感やしびれ,間欠性跛行を自覚する疾患であり,重症化すると安静時疼痛や組織欠損に至る。いずれの段階でも生活の質(quality of life;QOL)の低下は避けられないが,特に組織欠損や感染が続発する重症例では救命のために下肢切断を余儀なくされることもある。PADの原因疾患は閉塞性動脈硬化症(atherosclerosis obliterans;ASO)の他に閉塞性血栓血管炎(thromboangitis obliterans;TAO,バージャー病)や膠原病関連血管炎(collagen disease-associated vasculitis;CDV)が挙げられるが,ASOの患者数が最も多い。従来Fontaine分類Ⅲ度以上の虚血を有する下肢は重症虚血肢(critical limb ischemia;CLI)と呼ばれ血行再建の対象とされてきた。最近では虚血のみならず神経障害や感染,組織欠損などの下肢切断リスクも評価し,集学的治療による可及的速やかな下肢救済が求められつつある。このような包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia;CLTI)の治療は喫煙や糖尿病などの危険因子の除去に始まり,運動療法,抗血小板薬や血管拡張薬などの薬物療法,そして経皮的血管形成術(endovascular treatment;EVT)や外科的バイパス術が選択される。しかしながら,特に膝窩より末梢の動脈に閉塞やびまん性の高度狭窄病変を有する症例,あるいは腎機能低下や透析症例ではEVTや外科的バイパス術の治療成績は良好とはいえず,再閉塞のため反復治療を要する場合も少なくはない。また,TAOやCDVは,血管の特性上,血行再建術が困難な症例や早期再閉塞をきたす症例が多く,特にEVTのエビデンスは十分とはいえない。高齢社会ならびに透析患者数の推移をみれば,既存の治療法に抵抗性を示す症例は今後さらに増加すると予想され,患者の生命予後とQOLの改善にはさらなる治療法の確立が必要とされている。本稿ではこのような治療抵抗性CLTI症例への効果的な治療法の一つとして,「自家骨髄単核球細胞移植による血管再生治療の現況と将来性」について最新の知見とともに紹介する。
「KEY WORDS」therapeutic angiogenesisc,bone marrow-derived mononuclear cells,chronic limb-threatening ischemia(CLTI),peripheral arterial disease,no-option

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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