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2019年度日本再生医療学会 功績賞

循環器領域における再生医療技術を用いた新しい治療法の開発と再生医療発展への取り組み

宮川繁

再生医療 Vol.18 No.4, 86-91, 2019

わが国の心不全による年間死亡数は約4万3千人,特に末期的重症心不全にあっては1年死亡率が75%とされる。これら致死的な虚血性心筋症や拡張型心筋症の根本的治療法は,心臓移植や補助人工心臓などの置換型治療が中心である。わが国においては脳死移植法案改正に伴いドナー数は増加しつつあるが,相対的ドナー不足は否めず,補助人工心臓の耐久性やデバイスラグ等によりこれら置換型治療は普遍的な治療とは言い難い。
このような医療情勢のなか,我々は外科的心不全治療の第3の矢として,自己筋芽細胞シートのトランスレーショナルリサーチを行い,本製品による補助人工心臓からの世界初の離脱を経験した。テルモ社と共同で開発された同製品は,「ハートシート®」として心不全に対する世界初の再生医療等製品として保険収載された。近年では,心不全の完全制圧を目指し,iPS細胞由来心筋細胞シートを開発すると同時に,外科的治療に特化せず,疾患特異的iPS細胞を用いて,細胞工学技術を駆使した創薬スクリーニング系の開発を行っている。また製品開発のみならず,新規プロスタサイクリン受容体アゴニストを用いて再生医療のメカニズムを応用した創薬(再生創薬)といった新しいコンセプトを提唱するとともに,人工知能(AI)を用いた再生医療等製品の製造をはじめとした革新的医療基盤技術の開発を行っている。
上記のような多岐にわたる再生医療および周辺技術に関する我々の研究開発が企業の方向性と適合した結果,企業の再生医療分野への新規参入を促しており,わが国の再生医療産業の発展のため,トランスレーショナルリサーチで得た経験,技術,情報の共有を行い,再生医療等製品の開発を積極的に行っている。
「KEY WORDS」細胞シート,心不全,筋芽細胞,iPS細胞,疾患特異的iPS細胞,トランスレーショナルリサーチ

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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