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Review(再生医療)

成体幹細胞についての最近のトピックス

吉川倫太郎宮城聡松崎有未

再生医療 Vol.17 No.4, 30-44, 2018

成体幹細胞(組織幹細胞,体性幹細胞)は自己複製能と多分化能を有する細胞であり,さまざまな組織において損耗や傷害によって失われた細胞を補充することで組織の恒常性維持に重要な役割を果たしている。成体幹細胞はニッチと呼ばれる特殊な微小環境に存在しており,ニッチからのさまざまなシグナルによって成体幹細胞の自己複製や未分化状態維持が制御されている。
成体幹細胞は個体の生涯にわたって組織の恒常性維持に働くが,この間に成体幹細胞はさまざまなストレス(DNA損傷,テロメア短縮,酸化ストレス,慢性炎症など)に曝される。一方,加齢に伴い個体を構成する組織や臓器の機能は次第に低下し,多くの加齢性疾患の発症頻度が増加する。最近,この加齢に伴う臓器や組織の機能低下の,少なくとも一部が,その組織に局在する成体幹細胞の機能低下・変化で説明されるという例が報告されている。また,わが国を含む多くの先進国では高齢化が進行しているため,加齢性疾患に罹患する患者は増加している。したがって,それらの疾患の新規治療法を開発するためにも成体幹細胞研究のますますの発展が期待されている。
現在世界では多くの研究者がそれぞれの成体幹細胞について活発に研究しており,わずかな期間で膨大な量の情報が蓄積している。したがって,すべての成体幹細胞の研究の進展を完璧に把握することは難しい。しかし,複数の成体幹細胞において制御機構を共有している可能性があるとともに,共通の実験手法が必要になることも多いため,さまざまな成体幹細胞の研究の進展を横断的に見ることは重要である。
本稿では成体幹細胞についてできる限り広く眺めることによって最近の研究の動向を探ることとする。当然のことながら,すべての成体幹細胞研究が足並みを揃えて進んでいるわけではないため,本稿ではまずいくつかの成体幹細胞について,その研究背景と最近報告された研究成果を紹介した後,全体を総括することで成体幹細胞の最近の動向を分析する。
「KEY WORDS」幹細胞,ニッチ,自己複製,未分化性,老化

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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