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THE COMMENTARY

学術研究機関による「幹細胞治療臨床試験」広報の倫理的課題

武藤香織

再生医療 Vol.17 No.3, 53-57, 2018

再生医療は,他に頼るべき治療法がない患者を標的とした診療ビジネスに利用されやすい領域の一つだろう。国際幹細胞治療学会(ISSCR)は,その設立当初から,安全性と効果が未確立な「幹細胞治療」が,あたかも確立された治療法であるかのように喧伝される傾向に懸念を抱いてきた。2008年には患者向けの啓発資料を発表し1),2016年に「幹細胞研究・臨床応用」ガイドラインを改正した際には,新たに「専門家による情報発信のあり方(第4章)」を新設している2)。日本再生医療学会でも,2015年からリスクコミュニケーションに力点を置いた一般向けのシンポジウムを定期開催しているほか3),2017年には一般の人々に向けたメッセージとして,「自由診療で提供されているものの中には法令を遵守したEvidence Based Medicine(科学的根拠に基づいた医療)とはいえない治療が混在している側面も否定できません」と警鐘を鳴らす4)などの努力をしている。
以上のように,従来,アカデミアが憂慮してきたのは,営利に主眼を置いた「幹細胞治療」クリニックによる宣伝であった。しかし本稿では,近年,米国のアカデミアによる「幹細胞臨床試験」の宣伝にも倫理的観点から批判がある点に注目して問題提起をしたい。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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