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その他

山中伸弥先生ノーベル医学・生理学賞受賞を祝して

中辻憲夫

再生医療 Vol.12 No.1, 17-17, 2013

山中伸弥博士とJohn Gurdon博士に対するノーベル医学・生理学賞の授賞理由は, 教科書を書き換え科学史に残る再プログラム化(reprogramming)の研究成果に加えて, 山中教授が作り出したiPS細胞(人工多能性幹細胞)が疾患メカニズムの解明や新薬開発に貢献する可能性だった. 今回の受賞を祝すると同時に, 初期化機構の全容解明を目指す基礎研究の更なる進展に加えて, 医学創薬への応用が大きく発展することを願っている. 現在ヒトES細胞を用いた臨床試験が開始しており, 世界の製薬企業はヒトiPS細胞を創薬に活用し始めている. 今後本格的に医療と創薬に実用化されるためには, これまでの研究段階技術だけでなく, 実用化を目指した画期的な技術革新が必要であり, 特に細胞治療の実用化のためには, 治療効果の達成に加えて, 安全性や信頼性の確保, さらにコストの高騰抑制が求められる. 前臨床研究の成果を基に, いくつかの疾患に対する臨床試験により最初の細胞治療が今後成功したとして, その先には, 多数の患者への信頼性高い医療としての実用化が期待されている. 実用化に必要なのは, 安全性と有効性の確認, 多能性幹細胞株の品質信頼性・安定性とリスク管理, 分化後の移植用細胞ロットの品質信頼性・安定性とリスク管理, そして移植用細胞生産コストなど細胞治療コストの抑制である. 私たちは, サイトカインや細胞接着蛋白質などを代替可能な小分子化合物やポリマーなど機能性マテリアルを開発し, 実用化に不可欠となる高品質および信頼性と低コスト化を同時に達成できる大量培養技術や分化誘導技術の確立を目指している. 真の実用化には, 大学や公的研究機関に加えて, バイオテクノロジーや医薬関連企業の参加が不可欠となる. 私たちiCeMSでは, 産業界との協働やグローバル連携を含めたオープンイノベーションを展開している. 再生医療の実用化に必要なキーワードを再度強調すれば, 品質信頼性と安定性, 安全性のリスク管理, 細胞生産などコストの抑制, グローバルスタンダード確立である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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